CHEMOTHERAPY
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リンコマイシン (LCM) の喀痰内および胸水内移行
中富 昌夫長沢 正夫田中 光張 景弘伊藤 直美藤田 紀代重野 芳輝山口 恵三広田 正毅那須 勝斎藤 厚原 耕平
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1982 年 30 巻 1 号 p. 61-66

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抄録

リンコマイシン (LCM) はグラム陽性菌および嫌気畳1菌に対して優れた抗菌力を有する。LCMの静脈内注射時の血中濃度についての報告はあるが, 喀痰内, 胸水内移行濃度にく) いての成績は少ない。そこでLCMの点滴静注時の血中濃度および喀痰内移行濃度, 筋注時の胸水内移行濃度について検討し, LCMが奏効した嫌気性菌性慢性気管支炎の1例を報告した。慢性気管支炎5例, 肺化膿症1例および糖尿病1例に, LCM1~3gを点滴静注し, 点滴終了時, 終了後1, 2, 4および6時間目に採血を行ない, 喀痰は点滴開始から各1時問毎に全量を採取した。また胸水を伴う肺癌3例に本剤19を筋注し, 注射後1, 2, 4および6時間目に, 胸水および血液を採取した。薬剤濃度測定は, M.luteus ATCC 9341を検定菌とするカップ法で実施した。32歳主婦のBacteroides sp.による慢性気管支炎感染例に, 本剤3g/日, 13日問点滴投与し, その後の経過を観察した。1g点滴の場合, 最高血中濃度は点滴終了時26~38.3μg/ml, 3gては50~125μg/mlで, 最高喀痰内移行濃度は1gで, 3~16μg/ml, 3gで14~18μg/mlであった。1g筋注時の最高血中濃度は23.2~30μg/ml (1~2時間目) であった。胸水内移行は6.9~18.2μg/mlが2~4時間日に測定された。Bacteroidesによる慢性気管支炎ては治療閉始後4~5口て解熱し, 咳嗽・喀痰も減少し治癒した。よ剤の喀痰内への移行は極めて良好で, 感性菌による呼吸器感染症に有用な薬剤と思われた。

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