CHEMOTHERAPY
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尿路感染症に対するT-1982の基礎的・臨床的検討
大井 好忠後藤 俊弘川畠 尚志小畠 道夫岡元 健一郎阿世知 節夫坂本 日朗永田 進一陳 英輝柿木 敏明
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1982 年 30 巻 Supplement3 号 p. 842-862

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抄録
T-1982について尿路感染症分離菌にたいする抗菌力, 健康成人における体内動態を測定するとともに尿路感染症にたいする本剤の臨床効果ならびに副作用について検討した。
E.coli, K.pneumoniae, Enterobacter, S・marcescens, P.mirabilis, P.vulgaris各30株計180株について本剤ならびにCefotetan (CTT) とCefmetazole (CMZ) の抗菌力を測定して比較検討した。
S.marcescensにたいしては本剤の抗菌力がCTT, CMZよりも優れ, 他菌種にたいしてはCTTとほぼ同等の抗菌力であるが, CMZよりも優れた抗菌力を示した。
健康成人6名にcrossoverで本剤, CMZ各1gを静注した。5分後の血清中濃度はそれぞれ109.3, 126.8μg/mlに達した。薬動力学 (薬物速度論) 的パラメーターではKel (排泄速度定数), total clearanceはCMZが有意に高値を示すが, 生物学的半減期, AUC (血中濃度曲線下面積) は本剤が大であった。12時間までの尿中排泄率は本剤76.2%, CMZ 90.0%であり, 最高尿中濃度は最初の2時間尿で得られ, それぞれ4,784, 6,343μg/mlであった。
慢性複雑性尿路感染症36例にたいする本剤の臨床効果は, 総合有効率72.2%であった。単独感染群の有効率は79%におよび, 細菌学的にはS.marcescens14株中9株 (64.3%) が除菌されたのが目立った。
自覚的副作用はみとめられなかったが, 好酸球増多2例, GOT, GPT上昇例1例がみられた。
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© 社団法人日本化学療法学会
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