CHEMOTHERAPY
Online ISSN : 1884-5894
Print ISSN : 0009-3165
ISSN-L : 0009-3165
Sulbactam/Cefoperazone合剤の人組織内濃度について
中西 昌美吉本 正典西代 博之葛西 洋一橋本 伊久雄沢田 康夫中村 孝三上 二郎斉藤 美知子戸次 英一
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 32 巻 Supplement4 号 p. 379-391

詳細
抄録

β-lactamaseに対する不活性化剤, Sulbactam (SBT) と第三世代のcephem系抗生剤, Cefoperazone (CPZ) の1: 1の合剤Sulbactam/Cefoperazone (SBT/CPZ) を用い胆道感染症6例, 急陛虫垂災6例, 腸閉塞症1例, 胃潰瘍2例, 下肢動脈閉塞1例, その他2例計18例の手術前にSBT/CPZ19を静注し, 術中採取した各種体瓶組織内のSBT, CPZ濃度を主としてbioassay法により測定した。総胆管胆汁へのCPZ移行は非常に高濃度に達したが, SBTも血中濃度に比して良好な移行を認めた。胆嚢管閉塞例の胆嚢胆1七胆嚢壁では両剤間に大差はなかった。腹水および炎症虫垂では両剤とも静注後早期より移行を認めたか, SBTは静注後10分以内ではCPZよりも高濃度を認め, CPZはSBTより遅れて高濃度に達した。SBTはCPZに先行して移行するのでβ-lactamase不活性化作用において有意義であるといえる。炎症病巣での持続時間は両剤とも比較的長時間高濃度を保つがSBTがやや早く低下する傾向を認めた。動脈閉塞による血行不全の症例でも, 炎症部位の両剤の濃度は他の部位に比して高濃度を保ち, とくにSBTの差が大であった。起炎菌を同定し得た症例は7例であったが1例はCPZ耐性, SBT/CPZ鞭性をしめし, 他はCPZ, SBT/CPZともに良好な感受性を認めた。炎症組織内濃度はMICよりも高濃度を比較的長時間維持しており, 臨床的な有用性が示唆されたといえる。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top