1984 年 32 巻 Supplement4 号 p. 413-433
新しく開発されたSulbactam/Cefoperazone (SBT/CPZ) について基礎的, 臨床的検討を行った。
本合剤はCefoperazone (CPZ) と同様に巾広い抗菌スペクトルを有し, S. marcescens, P. aeruginosaに対して抗菌力の増強は, ほとんど見られないものの, β-lactamase産生性のCefoperazone耐性菌に対しては配合されているβ-lactamase阻害剤のSulbactam (SBT) の作用により抗菌力が増強される特徴がある。
臨床分離株に対する本合剤の抗菌力は, CPZ感受性株についてはCPZより多少劣っているが, S. epidermidis, E. coli, K. pneumoniae. E. cloacae のCPZ耐性株については, すぐれた感受性分布を示した。
健康成人3名に本合剤2,000mg静注し, 血中および尿中濃度をHPLC法, GGMS法により測定した。その結果投与後1/12時間にピーク値を示し, 平均血中濃度はSBT65.5μg/ml, CPZ150.7μg/mlであった。尿中濃度の平均値は1時間後でSBT6697μg/ml, CPZ1533μg/mlを示し, 8時間までの平均尿中回収率はSBT60.2%, CPZ17.9%であった。
Twocompartment open model methodによりcomputerにてpharmacokinetic parameterを検討した。その結果T1/2 (β) はSBT0.78時間CPZ1.57時間であり, AUCはSBT52.1hr・μg/ml, CPZ208.6hrμg/mlであった。
生体内代謝についてTLCを用いbioautogramについて検討したところSBT/CPZ投与後の人尿では, SBT, CPZ共に代謝されることなく排泄されることが証明された。
臓器内移行についてSD系ラットを用い本合剤40mg/kgを筋注した成績では, SBTで腎>肝>肺>血清に高い濃度が得ら礼CPZでは腎>肝>血清>肺の順であった。
臨床成績については, 腹腔内膿瘍1例, 呼吸器感染症1例に投与した結果共に有効であった。
副作用は, 自・他覚的にも, 臨床検査値にも異常は認められなかった。