CHEMOTHERAPY
Online ISSN : 1884-5894
Print ISSN : 0009-3165
ISSN-L : 0009-3165
抗菌薬の併用に関する研究 (第1報)
戸塚 恭一大井 聖至熊田 徹平清水 喜八郎渡辺 泰雄林 敏雄
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 34 巻 4 号 p. 286-293

詳細
抄録

健常人志願者について, piperacillin (PIPC) とcefazolin (CEZ), cefoperazone (CPZ), cefotetan (CTT) およびcefsulodin (CFS), さらにABPCとCEZとの点滴併用投与時の血中濃度, 尿中回収率について, それぞれ単独投与時とcross-overにて検討した。
各々の単独投与時に比べると, PIPCとCEZおよびCTTの併用では, CEZおよびCTTの血中濃度の上昇, 尿中回収率の低下を認めた。PIPCとCPZの併用では, CPZの血中濃度の上昇を認めたが, 尿中回収率に差を認めなかった。PIPCとCFSの併用では, CFSの血中濃度および尿中回収率に差を認めなかった。PIPCの作用はABPCとCEZの併用では, ABPCはCEZの血中濃度, 尿中回収率に影響を与えずペニシリン系に共通したものではないと考えられた。
ProbenecidとPIPC, CEZおよびCPZの併用投与時の血中濃度, 尿中回収率について検討すると, probenecidの併用により, PIPC, CEZは, 血中濃度の上昇, 尿中排泄率の低下を示し, その影響はPIPCよりCEZの方が強かった。CPZは血中濃度, 尿中回収率に変化を認めなかった。
このことより, PIPCと併用した場合は, CEZの血中濃度の上昇は, PIPCによるCEZの腎尿細管分泌の抑制によると考えられ, CPZでは, 腎排泄での抑制は認めず, 血中濃度の上昇は, 肝における排泄抑制と考えられた。CTTでも尿細管分泌の抑制を認めたが, 肝排泄の抑制の可能性も考えられた。CFSとは排泄過程での影響はほとんどないものと考えられた。PIPCのこのような作用はPIPCに特有な作用と考えられた。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top