1988 年 36 巻 Supplement9-Base 号 p. 116-120
近年のキノロン系抗菌薬の進歩には目覚ましいものがあるが, 反面, その副作用も注目されてきている。とくに, エノキサシンと非ステロイド系消炎剤の一つであるフェンブフェンとの併用時に痙攣の発現をみたという報告がなされてより, その痙攣発現機序が注目を集めている。我々は, 中枢神経系において抑制性伝達物質と考えられているGABAの受容体結合に及ぼす新キノロン系抗菌薬であるT-3262とその構造類似体の影響を検討した。
T-3262を始めとする構造類似体は濃度依存的にGABA受容体結合を阻害したが, その阻害効果は, 他のキノロン系抗菌薬よりも弱いものであった。さらに, T-3262は, 非ステロイド系消炎剤の共存下においても, その阻害効果は, 殆ど増強されなかった。
以上のin vitroの結果より, T-3262は, 痙攣誘発作用の弱い薬物であろう事が示唆された。また, 非ステロイド系消炎剤との併用時においても, 痙攣誘発作用の弱い薬物であろう事が示唆された。