日本化学療法学会雑誌
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Pazufloxacinのラット血糖値に及ぼす影響
木村 和幸岩井 正和田口 政広林 仁理花田 秀一小柴 博川畑 好之康堀 誠治嶋田 甚五郎
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1995 年 43 巻 Supplement2 号 p. 132-142

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抄録

ニューキノロン系合成抗菌薬であるpazufloxacin (PZFX) をラットに単回および反復 (1日1回, 28日間) 経口投与し, 血糖値ならびに血糖調節ホルモン (インスリン, グルカゴン) および糖代謝に影響を及ぼすと考えられる甲状腺ホルモンのトリヨードサイロニン (T3), サイロキシン (T4) への影響を検討した。
なお, ラットにおける評価モデル系の確立のため, ラットの経口糖負荷試験を行い, 既報告と一致するか検討した。また, 血糖値ならびに血糖調節ホルモンの日内変動を調べ, 絶食条件の検討を行った。その結果,
(1) ヒト用インスリン測定キットを用い, ラットインスリンも測定できる (ラットインスリン1ng/mlはヒトインスリン10μg/mlに相当する) ことが判明した。また, トリヨードサイロニン, サイロキシンおよびグルカゴンの測定もヒト用測定キットで測定可能であり, 経口糖負荷試験でその測定系の有用性が実証された。
日内変動の検討より, 絶食は検査前日21時より実施するのが血糖値の変動も少なく良好な実験条件となることが判明した。
(2) PZFXの推定臨床用量の100倍に相当する1200mg/kgをラットに単回経口投与し, 投与後の血糖値および血糖調節ホルモンへの影響を検討したが, 薬剤投与による影響は認められなかった。また, 膵臓ランゲルハンス氏島の病理組織学的検査においても異常または特異的な変化は認められなかった。
(3) PZFXの推定臨床用量の50倍に相当する600mg/kgをラットに1日1回, 28日間反復経口投与したところ, 最終投与日のインスリン値に増加傾向が認められたが, 血糖値に変化は認められず, PZFX投与に起因した変化ではないと考えられた。その他, 血液生化学パラメーターおよび膵臓ランゲルハンス氏島の病理組織学的検査に何ら異常または特異的な変化は認められなかった。
以上の結果より, PZFXが血糖値ならびに血糖値に影響を及ぼす諸因子に損傷を与える可能性はないと判断された。

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