日本化学療法学会雑誌
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産婦人科領域におけるcefluprenamの基礎的・臨床的検討
三鴨 廣繁伊藤 邦彦和泉 孝治川添 香子山田 新尚玉舎 輝彦
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1995 年 43 巻 Supplement4 号 p. 204-209

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抄録

新しく開発された注射用セフェム系抗生物質cefluprenam (CFLP) について, 産婦人科領域に対する基礎的検討および臨床的検討を行い, 以下の成績を得た。
1. 産婦人科領域感染症から分離された6菌種170株を用いて抗菌力をceftazidime (CAZ), cefotaxime (CTX), cefpirome (CPR) を比較薬剤として寒天平板希釈法により検討した。Streptococcus agalactiaeに対するCFLPのMIC90値は0.10μg/mlであり, CTX, CPRと同等であった。Enterococcus faecalisに対するCFLPのMIC90値は12.5μg/mlであり, 対照薬剤のなかではもっとも強い抗菌力を示した。また, MIC値が100μg/mlより大きい値を示す高度耐性菌は認められなかった。Escherichia coliに対するCFLPのMIC90値は0.025μg/mlであり, 対照薬剤のなかではもっとも強い抗菌力を示した。Peptostreptococcus magnusに対するCFLPのMIC90値は1.56μg/mlであり, 対照薬剤のなかではもっとも強い抗菌力を示した。Bacteroides fragilisに対するCFLPのMIC50値は6.25μg/mlであり, CTXと同等, CAZ, CPRより良好な値を示した。Prevotella biviaに対するCFLPのMIC50値は25μg/mlであり, CPRと同等, CAZ, CTXより1~2段階劣っていた。CFLPはS. agalactiae, E. faecalis, E. coliなどの好気性菌およびP. magnusを代表とする嫌気性グラム陽性球菌に対しては良好な抗菌力を示したが, B. fragilis, P. biviaなどの嫌気性グラム陰性菌に対しての抗菌力は十分とは言えなかった。
2. CFLPのラット性器組織移行および新しく作成したラット子宮内感染モデルを用いたCFLPの治療効果について検討した。CFLPは, aztreonam (AZT) およびCTXより良好な組織移行を示した。また, CFLPは, 各性器組織における生菌数を明らかに減少させ, 良好な治療効果が認められた。
3. 臨床効果については8例で検討した。臨床効果は有効5例, 無効1例, 判定不能2例であった。判定不能症例2例は, いずれも術後創感染症例であり, 基礎疾患重篤のため薬効判定不能であった。薬効判定可能症例のなかで起炎菌を確認し得た症例は3例であった。S. agalactiae, E. faecalis, Corynebacterium sp., Prevotella sp., anaerobic Grampositive rod (GPR) の各々1株ずつが分離同定されanaerobic GPR 1株の不明を除き他の株はすべて消失した。本剤投与中, 投与後までの自・他覚所見上副作用と認めるべき症状は認められなかった。本剤によると考えられる臨床検査値異常変動は, 8例中2例にGPTおよびALPの上昇, 1例にGOTの上昇, 1例に白血球数の減少が認められたが, 無処置で投与前状態に復した。

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