日本化学療法学会雑誌
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小児細菌性上気道感染症におけるindirect pathogenicityの臨床的検討
豊永 義清石原 俊秀出口 浩一
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1998 年 46 巻 4 号 p. 148-155

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抄録

小児細菌性上気道感染症例を対象として, β-ラクタマーゼ産生菌によるindirect pathogenicityについて臨床的に検討し, 本感染症における抗菌薬選択のあり方について考察した。検討例数は176例であり, 単独菌感染例は41例 (23.3%), 複数菌感染例は135例 (76.7%) であった。direct pathogenとして分離された主な菌種はHaemophilus influenzaeおよびStreptococcus pneumoniaeであり, indirect pathogenとしてはMoraxella subgenus Branhamella catarrhalis, Staphylococcus aureusが主に分離された。β-ラクタマーゼ産生菌によるdirectまたはindirect pathogenicityの関与が考えられる症例は, 130例で全検討例数の73.9%を占めていた。これらの症例に対し, 無作為にamoxicillin (AMPC) またはclavulanic acid/amoxicillin (CVA/AMPC) を投与し, direct pathogenの消失効果ならびに臨床効果について, β-ラクタマーゼ非産生菌による症例 [β(-) 感染例] とβ-ラクタマーゼ産生菌を含む症例 [β(+) 感染例] にわけて比較検討した。direct pathogenの消失率は, 薬剤投与3日後, 7日後ともに, β(-) 感染例では両投与薬剤群間に有意差は認められなかったのに対して, β(+) 感染例ではCVA/AMPC群が有意に優れていた。これらの結果は, M.(B.) catarrhalisが分離された複数菌感染例においても同様であった。臨床効果では, 両群間に有意差は認められず, M.(B.) catarrhalisが分離された複数菌感染例においてCVA/AMPC群が優れる傾向が示された。direct pathogenの消長において, β-ラクタマーゼ産生菌によるindirect pathogenicityの関与は明白であるが, 感染病態全般を含めた臨床的な意義を明らかにするためには, 長期的な予後も含めた検討を要すると考えられた。

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