日本化学療法学会雑誌
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Fosfomycinの抗菌作用以外の薬理作用に関する基礎的・臨床的検討
渡部 宏臣
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キーワード: 抗菌作用, 抗炎症作用
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1999 年 47 巻 3 号 p. 129-146

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抄録

Fosfomycin (FOM) はグラム陽性および陰生菌に幅広く有効な抗菌薬で他に類薬はない。1980年に本邦で実用化されて以来その有用性と安全性は高く評価され, 臨床で使用されてきた。長年にわり感染症治療薬として臨床で使用する過程で, 難治性口内炎, アトピー性皮膚炎, 重症喘息など難治性疾患の症状改善や治療効果, 他剤によって惹起される腎毒性の軽減作用などの臨床例が蓄積されてきた。これらの成績はFOM本来の薬理作用である抗菌作用では十分説明できず, FOMが免疫系など生体へ直接作用している可能性が考えられていた。最近の基礎研究により, FOMがヒトのリンパ球, 単球マクロファージ, 好中球, 好塩基球, 好酸球などの免疫担当細胞の機能を修飾することにより。抗炎症作用, 抗アレルギー作用など抗菌以外の薬理作用を有することが明らかになってきた。そしてFOMのこれらの基礎研究の知見を前提に新たな視点で臨床応用が試みられている。HAM (HTLV-I-associated myelopathy), 肺線維症などの肺疾患, 慢性副鼻腔炎などの疾患でFOMの有用性が検討され, 症状の改善などの治療効果が認められている。しかし, FOMの抗菌作用以外の薬理作用に関する作用機序はまだ解明されておらず, 今後の課題となっている。FOMの新たな臨床分野の可能性を探るためにもその作用機序を明らかにする必要がある。

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