日本化学療法学会雑誌
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抗菌薬の免疫グロブリン産生およびリンパ球増殖におよぼす影響
宮下 琢島本 祐子斧 康雄山岡 利守小澁 陽司伊藤 匡松本 かおる杉山 肇西谷 肇國井 乙彦
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2000 年 48 巻 12 号 p. 898-902

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抄録

抗菌薬の液性免疫に対する作用を検討する目的で, 健常成人の末梢血から分離した丁細胞とB細胞を各種抗菌薬の存在下で混合培養し, 培養上清中のIgG産生と細胞増殖を検肘した。Erythromycin, darithmmycin, fosfbmycin, tobramycin, amikacinを最終濃度1μg/mLあるいは5μg/mLの存在下で培養したとき, 培養上清中のIgG濃度は, 築剤非存在下で行ったコントロール培養の濃度とほぼ同程度であった。Grepafloxacinは, 1μg/mL以下で用いた場合はコントロールと同程度であったが, 5μg/mL以上ではIgG濃度が有意に低下し, 明らかな抑制作用を示した。しかし, 同じキノロン薬でもofloxacinは。1μg/mLおよび5μg/mLでIgG濃度に影響をおよぼさず, 抑制作用は認められなかった。IgG濃度に影響しなかった6薬剤は, 細胞増殖についてもあきらかな影響をおよぼさなかった。一方grepafloxacinは, 1μg/mL以下の濃度ではコントロールと有意差はなかったが, 5μg/mL以上であきらかに細胞増殖を抑制した。以上の結果から, 今回使用した薬剤のなかでは, 唯一grepafloxacinが液性免疫に対する免疫修飾作用を有している可能性が示唆された。この作用は, 臨床的に到達可能な濃度で示されたことから, 注目すべき抗菌外作用の1つと考えられる。

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