日本化学療法学会雑誌
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老人病棟において分離された気道由来Staphylococcus aureusの薬剤感受性に関する検討
麻生 憲史真崎 宏則渡辺 貴和雄坂本 翊田尾 操貝田 繁雄松本 慶蔵渡辺 浩大石 和徳永武 毅
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2001 年 49 巻 2 号 p. 82-88

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抄録

愛野記念病院内科老人病棟において, 院内感染防止対策継続中の1995年8月から1996年8月までに, 老人病棟入院患者より分離された気道由来Staphylococcus aureus 148株 (鼻腔72株, 咽頭44株, 喀痰32株) の薬剤感受性について検討した。気道由来S. aureusの中でMRSA (DMPPC: MIC≧12.5μg/mL) は鼻腔由来45株 (62.5%), 咽頭由来35株 (79.5%), 喀痰由来30株 (93.7%) であった。セフェム系, ペニシリン系, カルバペネム系などのβ-ラクタム系薬に対しては, 高度耐性株が依然として多いのが現状であった。1987年以降, 耐性化が進んでいたminocycline (MINO) については, 鼻腔由来44株 (61.1%), 咽頭由来24株 (54.5%), 喀痰由来8株 (25.0%) は感受性 (MIC≦6.25μg/mL) となっており, MINOの使用制限を含む総合的院内感染対策継続により, 感受性株は漸増していた。一方, vancomycinでは, MIC6.25μg/mL以上の株を認めなかったが, MIC 3.13μg/mLを示した株は, 鼻腔由来72株中14株 (19.4%), 咽頭由来44株中9株 (20.5%) に認められた, 喀痰由来32株中にはMIC 3.13μg/mLを示した株は認めないものの, MIC 1.56μg/mLを示した株が90.6%を占め, 今後の耐性化が懸念される。また今回, コアグラーゼ型別, エンテロトキシン型別, toxic shock syndrome toxin-1産生性による表現型と薬剤耐性パターンを組み合わせることにより, 当院のMRSAは, 5つの主要なパターンを, MSSAは, 1つの主要なパターンを推定することができた。

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