日本化学療法学会雑誌
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血液由来MRSAに対する各種抗菌薬とarbekacinの併用効果の検討
渋谷 泰寛大野 高司伊東 紘一
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2001 年 49 巻 2 号 p. 89-94

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抄録

1996年11月から1999年4月の間に, 血液培養から分離された臨床分離methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) 206株についてarbekacin (ABK) と各種抗菌薬 (cefepime (CFPM), flomoxef (FMOX), cefazolin (CEZ), cefbtiam (CTM), sulbactam/ampicillin (SBT/ABPC), imipenem/cilastatin (IPM/CS), minocycline (MINO), fbsfomycin (FOM), levofloxacin (LVFX), cefmetazole (CMZ), teicoplanin (TEIC), vancomycin (VCM)) との併用効果についてin vitroの検討を行った。MIC値の測定は日本化学療法学会標準法 (微量液体希釈法) で行った。ABKと他薬との併用効果はABK100mg投与後3時間の血中濃度を1とした時の各種抗菌薬常用量投与後3時間の血中濃度の比に薬剤を混合して測定を行った。併用効果は, fractional inhibitory concentration (FIC) indexで評価した。ABKの単独MIC90値は2μg/mLで, 0.25~4μg/mLの間にMIC値が分布した。各種抗菌薬との併用によって, ABKのMIC値分布は感性に移動し, TEIC+ABKにおいて著明であった。ABKとの併用によってIPM/CS, LVFXのMIC分布曲線は感性に移動した。FIC indexの平均値は, IPM/CSは0.85, LVFXは0.89であった。ABKとの併用によってTEIC, VCMのMIC値分布は軽度感性に移動した。FIC indexの平均値はVCM+ABKが1.15, TEIC+ABKが0.93で, TEICでは52.3%で, VCMは37.9%の菌株が相乗または相加効果を示した。拮抗を示した薬剤, 菌株は1株もなかった。以上の結果より, IPM/CS, LVFXとABKとの併用はMRSA感染症治療のひとつの選択肢となりうる可能性が示唆された。また, 菌株によってはABKとVCM, TEICの併用効果も可能であると考えられた。

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