日本化学療法学会雑誌
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49 巻, 2 号
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  • 現状の問題と今後の課題
    砂川 慶介
    2001 年 49 巻 2 号 p. 77-81
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1997年, わが国で「新GCPのガイドライン」が, 翌年に従来の治験の問題点を整理し, かつ欧米のガイドラインを参考にした「抗菌薬臨床評価のガイドライン」が発表された。しかし, 臨床試験への参加の同意の取得が年々困難になってきたこと, プロトコール遵守の解釈が厳しく適応された, プロトコール違反に伴うドロップアウトが増加したことからわが国の臨床試験の進行は大幅に遅れるようになってきた。わが国の抗菌薬の開発状況をまとめると1996年からの5年問では驚くべきほど発売数が減少しているまた比較試験に要する期間も年々延長している。最近わが国の臨床試験の実施が困難になり, 海外のデータを外挿するブリッジング試験がさかんに行われるようになった。日本化学療法学会ではブリッジング試験検討委員会が組織され学会としての考えをまとめた。適応疾患分類の相違では疾患名の統一または対応表の作成が急務である。無駄な症例数の積み重ねは不要であるものの, 安易にブリッジングに走らず, わが国でも臨床試験がより実施しやすい環境の整備に努力することがもっとも重要な課題であり, 学会が中心に企業と当局が, わが国の抗菌薬の発展にしっかりと手を組んで進むことこそが重要なポイントである。
  • 麻生 憲史, 真崎 宏則, 渡辺 貴和雄, 坂本 翊, 田尾 操, 貝田 繁雄, 松本 慶蔵, 渡辺 浩, 大石 和徳, 永武 毅
    2001 年 49 巻 2 号 p. 82-88
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    愛野記念病院内科老人病棟において, 院内感染防止対策継続中の1995年8月から1996年8月までに, 老人病棟入院患者より分離された気道由来Staphylococcus aureus 148株 (鼻腔72株, 咽頭44株, 喀痰32株) の薬剤感受性について検討した。気道由来S. aureusの中でMRSA (DMPPC: MIC≧12.5μg/mL) は鼻腔由来45株 (62.5%), 咽頭由来35株 (79.5%), 喀痰由来30株 (93.7%) であった。セフェム系, ペニシリン系, カルバペネム系などのβ-ラクタム系薬に対しては, 高度耐性株が依然として多いのが現状であった。1987年以降, 耐性化が進んでいたminocycline (MINO) については, 鼻腔由来44株 (61.1%), 咽頭由来24株 (54.5%), 喀痰由来8株 (25.0%) は感受性 (MIC≦6.25μg/mL) となっており, MINOの使用制限を含む総合的院内感染対策継続により, 感受性株は漸増していた。一方, vancomycinでは, MIC6.25μg/mL以上の株を認めなかったが, MIC 3.13μg/mLを示した株は, 鼻腔由来72株中14株 (19.4%), 咽頭由来44株中9株 (20.5%) に認められた, 喀痰由来32株中にはMIC 3.13μg/mLを示した株は認めないものの, MIC 1.56μg/mLを示した株が90.6%を占め, 今後の耐性化が懸念される。また今回, コアグラーゼ型別, エンテロトキシン型別, toxic shock syndrome toxin-1産生性による表現型と薬剤耐性パターンを組み合わせることにより, 当院のMRSAは, 5つの主要なパターンを, MSSAは, 1つの主要なパターンを推定することができた。
  • 渋谷 泰寛, 大野 高司, 伊東 紘一
    2001 年 49 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1996年11月から1999年4月の間に, 血液培養から分離された臨床分離methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) 206株についてarbekacin (ABK) と各種抗菌薬 (cefepime (CFPM), flomoxef (FMOX), cefazolin (CEZ), cefbtiam (CTM), sulbactam/ampicillin (SBT/ABPC), imipenem/cilastatin (IPM/CS), minocycline (MINO), fbsfomycin (FOM), levofloxacin (LVFX), cefmetazole (CMZ), teicoplanin (TEIC), vancomycin (VCM)) との併用効果についてin vitroの検討を行った。MIC値の測定は日本化学療法学会標準法 (微量液体希釈法) で行った。ABKと他薬との併用効果はABK100mg投与後3時間の血中濃度を1とした時の各種抗菌薬常用量投与後3時間の血中濃度の比に薬剤を混合して測定を行った。併用効果は, fractional inhibitory concentration (FIC) indexで評価した。ABKの単独MIC90値は2μg/mLで, 0.25~4μg/mLの間にMIC値が分布した。各種抗菌薬との併用によって, ABKのMIC値分布は感性に移動し, TEIC+ABKにおいて著明であった。ABKとの併用によってIPM/CS, LVFXのMIC分布曲線は感性に移動した。FIC indexの平均値は, IPM/CSは0.85, LVFXは0.89であった。ABKとの併用によってTEIC, VCMのMIC値分布は軽度感性に移動した。FIC indexの平均値はVCM+ABKが1.15, TEIC+ABKが0.93で, TEICでは52.3%で, VCMは37.9%の菌株が相乗または相加効果を示した。拮抗を示した薬剤, 菌株は1株もなかった。以上の結果より, IPM/CS, LVFXとABKとの併用はMRSA感染症治療のひとつの選択肢となりうる可能性が示唆された。また, 菌株によってはABKとVCM, TEICの併用効果も可能であると考えられた。
  • 渡辺 彰, 小林 慎
    2001 年 49 巻 2 号 p. 95-102
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    本検討の目的は, インフルエンザに対する医療費用を分析して, その社会的な影響度の定量化を試みることであり, わが国において行われたoseltamivirの臨床第III相二重盲検並行群間比較試験成績を検討の参考とした。すなわち, インフルエンザ様症状のため医療機関を受診した健常成人を分析対象とし, 最終的に肺炎を併発するか否かをエンドポイントとして, oseltamivir投与群, oseltamivir非投与群の2つの治療ストラテジーについてのディシジョンツリーを構築し, 両群の費用を比較した。分析にあたっては, 保険者側の立場から実施し, 要する医療費のみを比較したが, 追加的な分析としてインフルエンザによる休業に伴う生産損失を考慮した分析も実施した。分析に使用したパラメータは, oseltamivirの臨床試験成績から推計した数値やすでに発表されている文献成績を使用した。分析の結果, 1人あたりの期待医療費は, 生産損失を含まない場合はoseltamivir投与群が14,100円, 非投与群が14,412円となり, oseltamivir投与群が312円少ない結果となった。生産損失を費用として含めた場合は, 期待費用はoseltamivir投与群と非投与群とでそれぞれ56,654円, 63,485円となり, oseltamivir投与群が6,831円少ない結果となった。分析に用いたパラメータについて感度分析を実施し, いくつかのパラメータについて閾値を算出した。さらに, この結果をもとに全国規模の医療費に与える影響を推計したところ, oseltamivir投与によって11億円から34億円の医療費節減効果を期待できることが推計された。
  • 黒川 博史, 山田 大輔, 永田 明義, 勝又 一成, 山田 光男
    2001 年 49 巻 2 号 p. 103-107
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    IMP-1型メタロβ-ラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌に対し, アミノグリコシド系のisepamicin (ISP) を中心とする薬剤感受性の調査を行った。調査は, われわれが保管する, 臨床分離IMP-1型メタロβ-ラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌のPseudomonas aeruginosa 19株, Serratia marceseens 20株, Escherichia coli 2株, Klebsiella pneumoniae 5株, Enterobacter aerogenes 2株, Enterobacter cloacae 2株の計50株に対し, ISP, gentamicin, amikacin, tobramycin, dibekacin, およびpiperacillin, cefoperazone, ceftazidime, cefotaxime, cefminox, cefpirome, imipenem, sulbactam/cefoperazone, aztreonamの計14薬剤のMICを測定した。ISPのMICは, 0.25~≧256μg/mLの範囲に広く分布したが, 50株中の28株 (56%) に対して, ≦8μg/mLであった。よってISPは, IMP-1型メタロβ-ラクタマーゼ産生菌に対する有効な抗菌薬の1つであることが示唆された。
  • 島本 祐子, 西谷 肇, 山岡 利守, 小澁 陽司, 松本 かおる, 杉山 肇, 宮下 琢, 斧 康雄, 国井 乙彦, 佐藤 友英
    2001 年 49 巻 2 号 p. 108-111
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    最近, 難治性MRSA感染症の治療が問題となっている。今回, vancomycin (VCM), rifampicin (RFP), sulfamethoxazole/trimethoprim (ST) の併用が有効であったMRSAによる重症感染性心内膜炎の症例を報告する。症例は50歳の男性。2000年2月, 肺炎球菌性髄膜炎で入院した。髄膜炎は治癒したが, 3月下旬に血液培養よりMRSAが分離された。VCMを約3週間投与し, sulbactam/ampicillin, arbekacinに変更したがMRSAは陰性化しなかった。4月中旬, 心臓超音波検査で感染性心内膜炎と診断し, 難治性MRSA感染症と考え, VCM, RFP, STの併用を開始した。その10日後の血液培養からMRSAは消失し, 約3か月間の継続投与により治癒した。今後, MRSAによる重症感染症の症例でVCMにより除菌に難渋する症例には, VCM, RFP, STの3剤併用が有用である可能性がある。
  • 2001 年 49 巻 2 号 p. 112-119
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
  • 2001 年 49 巻 2 号 p. 119-134
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
  • 2001 年 49 巻 2 号 p. 140
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
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