2003 年 51 巻 6 号 p. 325-339
日本呼吸器学会の成人市中肺炎診療ガイドラインを適用して実施された成人市中肺炎実態調査の一環として, ガイドラインによって層別された軽症~ 中等症の肺炎のうち, 原因菌不明の細菌性肺炎 (タイプA), 原因菌を推定し得た細菌性肺炎 (タイプB) および一部の特殊病態下肺炎 (タイプE) に対して投与された第2世代セフェム系抗菌薬のcefotiamについて臨床効果と細菌学的効果, 安全性を検討した。タイプA, タイプB, タイプEに対するCTMの有効率はそれぞれ80.5%(268/333), 81.7%(49/60), 85.7%(12/14) と20年前の実用化当時と同様に高く, 本薬の有用性をあらためて示すものであった。また, タイプAとタイプBの有効率が同等であることは, 原因菌が不明であってもこのガイドラインの鑑別法によって細菌性肺炎を正確に抽出・層別し得ることを意味し, ガイドラインの有用性を裏づけていた。投与前にはStreptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae, Staphylococcus aureus, Klebsiella pneumoniaeが多く分離されたが, これらの例に対する有効率はそれぞれ89.8%(44/49), 86.7%(26/30), 80.0%(12/15), 83.3%(10/12) と高く, 菌消失率もそれぞれ88.5%(23/26), 87.5%(14/16), 85.7%(6/7), 100%(6/6) と高かった。以上より, cefotiamのように20年を経過した抗菌薬であっても, 成人市中肺炎についてはガイドラインを適用して病型を鑑別し, 投与適応とされる病型を中心に投与することにより以前と変わらない高い臨床効果の得られることが示されると共に, ガイドラインの有用性が裏づけられた。