日本化学療法学会雑誌
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Telithromycinのイヌおよびサルを用いた反復経口投与毒性試験ならびにトキシコキネティックス
重栖 幹夫B EluardH Thien-AubertD H DouvinJP StepniewskiJ M VidalG BodeV RoederC BonnatMH PascualA DuprontB LenfantM GuffroyPG DetilleuxJ RichardB Niggemann
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2003 年 51 巻 Supplement1 号 p. 115-130

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抄録

Telithromycin (TEL) の経11投与毒性を評価するために雌雄ビーグル犬の30日間投与試験および13週間投与-12週間の回復試験, および雌雄カニクイザルの28日間投与試験を実施し, あわせて, これらの試験におけるトキシコキネティックス (TK) を検討した。イヌの30日間試験 0, 50, 150および300mg/kg/IDにおいて, 300mg/kg/日の途中で安楽死させた雌1例に, 本薬によるフォスフォリピドーシスに関連した尿細管腎炎が認められた。各群で嘔吐, 150mg/kg/日以上で流涎, 軽度の体重増加抑制および脱水症状, 300mg/kg/日で輝板の反射性消失がみられた。腎毒性所見として, 150および300mg/kg/日でフォスフォリピドーシスの関与が考えられる血中尿素および/またはクレアチニンの増加および尿細管腎症の所見が認められ, これらの臨床症状の悪化が安楽死の1例にもつながったものと考えられた。本薬投与に起因したフォスフォリピドーシス様変化として, 肥大化マクロファージの組織浸潤が150mg/kg/日以上の肺, 肝, 胆嚢, リンパ節, 腸管系, 脾臓, 胸腺, 精巣上体, さらに, 300mg/kg/日の胃, 骨髄, 気管および尿道にみられた。以上の結果より, イヌ30日間試験の無毒性量は50mg/kg/日であると推定される。TKでは, 血漿中濃度の個体問変動が大きく, 投与量増加と一致せず, 150および300mg/kg/日のCmaxおよびAUCは, 1日目に比べ30日目で著しい増大を示した。13週間投与-12週間回復試験 (0, 20, 50および150mg/kg/日) において, 150mg/kg/日の雄1例の死亡例がみられ, 一部は本薬によるフォスフォリピドーシスが関与している広汎性尿細管腎症の病理所見が認められた。全群で嘔吐, 50mg/kg/日以上で流涎, 150mg/kg/日で体重増加量および摂餌最の軽度減少, 輝板の変化および肝酵素活性の軽度増加が認められた。本薬投与によるフォスフォリピドーシス様病理所見が, 50mg/kg/日以上の肺, 150mg/kg/日で腎, 肝, 胆嚢, 腸管系, リンパ節, 脾臓, 胸腺および骨髄で認められた。これらの変化は, 回復期間終了後には, 輝板, 肺, 腸間膜リンパ節, 腎, 尿管および膀胱の一部の病理変化を除き, いずれも完全に消失した。以上の結果から, イヌの13週間投与試験の無毒性量は, 50mg/kg/日であると推定される。TKでは, 中程度の個体問変動がみられ, 投与量の増加に比しCmaxは低く, AUCは高かった。性別および投与量にかかわらず各測定日のCmaxおよびAUCは同様であった。カニクイザルを用いた28日問試験 (0, 30, 60および120mg/kg/日) において, 120mg/kg/日で嘔吐, 軟便, 一般状態の悪化, 体重および摂餌量の減少がみられ, 肝酵素活性の増加および軽度の肝重量増加が認められた。以上の結果より, 本試験における無毒性量は60mg/kg/日であると推定された。TKでは, 中程度の個体問変動がみられ, CmaxおよびAUCは常に投与量比より高かった。1日目に比べ28日目のCmaxおよびAUCはそれぞれ1.8倍および2.0倍に増加し, C24hは, 雄で8日目, 雌で28日目に定常状態に達した。

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