日本化学療法学会雑誌
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グラム陽性菌の細胞および細胞下レベルにおけるtelithromycinの作用機構の検討
耐性誘導能からリボソーム親和性まで作用機序の検討
中島 良徳遠藤 菊太郎
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2003 年 51 巻 Supplement1 号 p. 83-93

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抄録

新規ケトライド系抗菌薬telithromycin (TEL) についてStaphylococcus aureusに対する耐性誘導能, S. aureusにおける50%発育阻害濃度 (ID50), 蛋白質合成阻害効果および耐性菌由来リボソームとの親和性について検討した。ディスク拡散法によるTELの耐性誘導能についてerythromycin A (EM) と比較検討した, TELは, EMとは異なり, マクロライド系抗菌薬 (Mac) 誘導型耐性のS. aureusに対して, 耐性誘導活性をまったく示さなかった。また感受性および耐性菌株を問わずEMより強い抗菌活性を示した。S. aureusにおける50%発育阻害濃度 (ID50) をEMおよびrokitamycin (RKM) と比較検討した。Mac感性株に対してTELはEM, RKMより5.3~5.5倍強い阻害活性を示し, さらに, 一部Macに構成型PM (Partialmacrolide) 耐性株に対してTELはRKMの1.5倍, EMの124倍強い抗菌活性を示した, Poly (A) 依存polylysin合成系を用いてTELの蛋白合成阻害効果を検討した。TELは感受性菌株および耐性誘導前のMac誘導型耐性菌株 (erm (A) 保有S. aureusおよびStreptococcus pneumoniae HL-3120) 山来リボソームにおける蛋白質合成を強く阻害したものの, 耐性誘導後のMac耐性菌由来リボソームに対しては阻害効果を示さなかった。TELのS. aurcusおよびS. pneumoniae由来リボソームとの親和性を検討したところ, 従来のMacと同様に50Sリボソームサブユニットと結合し, 30Sサブユニットとは結合しなかった。TELはMac感受性S. aureus由来50Sサブユニットに対する結合量に比べ, 低いながらも, PM耐性菌由来リボソームにも結合した。TELは, 感受性およびリンコサマイドやストレプトグラミンB型抗菌薬 (MLS) にも誘導型耐性を示す耐性誘導前S. pneumoniae山来のリボソームとも結合し, さらに, 従来の14員環Macとは異なり, 耐性誘導後のS. pneumoniae山来50Sサブユニットと感受性菌由来のサブユニットに比べ, 結合量は低下するものの特異的に結合した。

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