日本化学療法学会雑誌
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乳癌に対する5-fluorouracil系経口抗癌薬S-1とcisplatinによる実験的併用化学療法
頓宮 美樹山田 高也橋本 麻子平久 治氏原 淳町田 充厚田 幸一郎鈴木 達夫鈴木 幸男浅沼 史樹山田 好則
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2004 年 52 巻 3 号 p. 176-181

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抄録

5-fluorouracil (5-FU) 系経口抗癌薬であるS-1 (tegafur, gimestat, otastatpotassiumの合剤) とcisplatin (CDDP) の, 可移植性ヒト乳痛株MX-1およびR-27, MCF-7に対する抗腫瘍効果を, in vivoのヌードマウス移植法およびin vitroのSDI法を用いて検討した。ヌードマウスに腫瘍株を移植し, 腫瘍が100~300mgに達した時点でS-1は10mg/kgを週5日3週間経口投与・CDDPは3mg/kgを4日ごとに3回腹腔内投与した。併用療法は両薬剤を組み合わせて実施し, 効果判定はT/C値 (推定腫瘍体積の対照群に対する治療群の比) により行った。In vitroでは, SDI法により5-FU, CDDP併用効果を検討した。また, 併用の順序が抗腫瘍効果におよぼす影響についても検討した。In vivoの検討において, MX-1ではS-1, CDDPそれぞれの単独治療群に比べ併用群のT/Cが低く, 腫瘍も完全に消失し, 併用することによる腫瘍抑制効果の増強がみられた。R-27, MCF-7においては, 各単独治療群, 併用群いずれも効果が得られず, 併用による効果の増強は認められなかった。一方, in vitroのSDItestを用いた検討においても両薬剤併用時に腫瘍抑制効果の増強が見られ, 特にMX-1, R-27では単剤接触で抗腫瘍効果の得られなかった濃度でも, 併用することにより50%以上のIJ. 値が得られた。さらにMCF-7において, IC50値を用いたclassical isobologramにより薬剤の接触順序を検討した結果, CDDP接触後に5-FUを接触させる方が, 5-FUを接触後にCDDPを接触させるよりも, より高い効果の増強が認められた。これらの結果より, 乳癌に対する新たな治療戦術のひとつとして, 5-FUとCDDPの併用療法, とりわけS-1とCDDPの併用が有用である可能性が示された。

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