日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
後期高齢者誤嚥性肺炎の臨床的特徴
小野 博美石崎 武志永井 敦子大滝 哲朗橋本 守啓金森 一紀門脇 麻衣子上坂 太祐水野 史朗出村 芳樹飴嶋 慎吾大滝 秀穂
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 53 巻 12 号 p. 741-747

詳細
抄録

背景: わが国では高齢の老健施設入所者が増加している。これら高齢者は誤嚥性肺炎を含む呼吸器感染症で死亡する割合が高い。
目的: 誤嚥性肺炎を発症した後期高齢老健施設入所者の臨床的特徴を検討する。
対象および方法: ケアミックス型病院に入院した平均年齢85.8歳の104例 (114エピソード) の誤嚥性肺炎を検討した。誤嚥性肺炎の診断は嚥下性肺疾患研究会の提唱する臨床診断基準に準拠した。
結果: 老健施設から59.6%, 自宅からは35.1%が入院してきた。37.5℃以上は32.5%, 末梢血白血球数9,000/μL以上は33.3%を占めた。誤嚥性肺炎群の54エピソード (47.4%) に病原細菌が検出され, そのなかの25エピソード (46.3%) はグラム陰性桿菌, 21エピソード (38.9%) はMRSAであった。初期抗菌薬としてpiperacillin (PIPC) が42.1%, meropenem (MEPM) が32.5%, 次いで, cefazolin (CEZ) 20.2%の順に多く使用され, それぞれの反応性はMEPM群で80.0%, 次いで, CEZ群の619%, PIPC群の50.0%であった。27例で抗菌薬が変更されたが, 結局22例は不幸な転帰をたどった。予後不良群は, 直前まで経口摂取例, 合併症の出現例, 経皮酸素飽和度低下 (動脈血酸素分圧低下) 例, 発熱程度が軽い例, CRP値上昇例, 血清アルブミン値低値例であった。
結論: 前向き研究が必要であるが, 後期高齢者の誤嚥性肺炎の臨床的特徴と予後推定因子を明らかにしえた。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top