日本化学療法学会雑誌
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血液分離Enterococcus spp.のアミノ配糖体系薬高度耐性株の性状
金山 明子高橋 裕子内野 卯津樹長谷川 美幸佐藤 弓枝小林 寅哲金子 明寛
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2005 年 53 巻 3 号 p. 177-182

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抄録

Enterococcusはヒトの腸内常在菌として知られているが, 旦和見感染症を起こすことも報告され時には敗血症を惹起する。本菌による菌血症の治療にはアミノ配糖体薬とペニシリン系薬の併用療法が一つの治療方法として用いられている。今回は血液由来Enterococcusにおけるアミノ配糖体高度耐性 (highlevel aminoglycoside-resistant: HLAR) 株の薬剤感受性三および耐性遺伝子について検討した。
2001年2月から2002年2月に採取された血液検体6,730検体よりEnterococcus 149株 (22%) を検出した。内訳はEnterococcus faecalisが94株 (63.1%) と最も多く, 次いでEnterococcus faecium 41株 (27.5%) と両菌種で90.6%を占めた, Enterococcus 149株中HLAR株は計54株 (36.2%) 認められ, E. faecalisの耐性率50.0%に比較しE. faeciumは4.9%と低く, 菌種による差がみられた。アミノ配糖体修飾酵素遺伝子をPCRにより検索し, 54株中49株 (90.7%) にaac (6')-aph (2'') 遺伝子が検出された。また今回検討したいずれの耐性遺伝Cも検出されなかった5株を用いgentamicin (GM) 不活化能に関する検討を行った結果, GMの失活を認めた。これらHLAR 54株に対するperdcillin G (PCG), vancomycin (VCM), teicoplanin (TEIC), linezolid (LZD), telithromycin (TEL). gatifloxacill (GFLIX) のMIC測定では, 耐性株はPCG, TEL, GFLXに約4~44%認められた。今回の検討ではVCM, TEIC, LZDに対して耐性株は認められず, IILARによる感染症においてこれらは重要な治療薬となると示唆された。

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