日本化学療法学会雑誌
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ヒト唾液由来β-lactam系薬耐性嫌気性菌の検出
木下 智岩井 理恵松本 康宏前田 健生吉川 一志松本 和浩田伏 信村田 雄一篠田 豊井関 富雄尾上 孝利森田 章介
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2005 年 53 巻 8 号 p. 471-475

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抄録

ヒト唾液中β-lactam薬耐性菌について検討した。成人男性12名より安静時唾液を採取し, ampicillin (ABPC), cefaclor (CCL)およびcefteram (CFTM) 加寒天培地に塗抹した。嫌気培養にて発育したコロニーを薬剤選択菌とし, それらの菌種同定, β-lactamase産生性およびABPC, cefazohn (CEZ), CCL, CFrMのMICを測定した。ABPC選択菌39株, CCL選択菌45株およびCFTM選択菌46株のうち, β-lactamase産生菌はそれぞれ21, 2および3株であった。ABPC選択菌としては通性嫌気性グラム陽性桿菌が最も多く, 次いで偏性嫌気性グラム陰性桿菌であった。CCL選択菌では通性嫌気性グラム陽性球菌, 通性嫌気性グラム陽性桿菌の順, CFTM選択菌では通性嫌気性グラム陽性桿菌, 通性嫌気性グラム陽性球菌の順に多かった。ABPC選択菌とCFTM選択菌に対するMIC80は各薬剤で64~>256μg/mL, CCL選択菌に対してはABPCで16μg/mL, その他の薬剤で256μg/mLであった。ABPCではβ-lactamase産生・penicillinおよびcephem系耐性菌が, CCLではβ-lactamase非産生・cephem系耐性菌が, CFTMではβ-lactamase非産生・penicillinとcephem系耐性菌がそれぞれ得られた。薬剤での選択で供試菌を採取する際には, 使用薬剤により得られる菌種や耐性傾向および耐性機構が異なることを考慮すべきであることが示唆された。

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