2024 年 85 巻 7 号 p. 869-874
症例は68歳の男性で,定期検査として行った上部消化管内視鏡検査で食道癌と胃癌を指摘され,当時のガイドラインによる食道癌標準治療に従って術前化学療法後に根治術を行う方針とした.根治術として,胸腔鏡下食道切除術,胃全摘術,胸壁前経路結腸再建を施行した.術後第4病日,上部消化管内視鏡検査にて再建結腸壊死が明らかとなり,再建結腸抜去術と食道瘻造設術を施行した.術中所見にて,挙上した回結腸が全長に渡り壊死し,腸間膜血管内がほぼ全長に渡り血栓化していた.各種凝固能を精査したところプロテインS活性が33%であり,最終的に先天性プロテインS欠乏症の診断に至った.
本症例は,術後に明らかとなったプロテインS欠乏症が関与したことにより再建結腸壊死を誘発したと考えられる.手術の際は,ある一定の割合で血栓性素因を合併していることを念頭に入れるべきと考えられた.