日本化学療法学会雑誌
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Phamacodynamic modelにおけるdoripenemの殺菌効果
黒田 直美宗景 正山野 佳則
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2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 96-103

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抄録

1回あたりの投与用量あるいは1日あたりの投与回数を変化させた種々の投与条件時に生ずるヒト血中濃度推移を試験管内で再現して新規カルバペネム系抗菌薬doripenem (DRPM) の殺菌力を評価し, MIC以上の濃度を維持する時間 (T>MIC) との相関性を検討した. その結果, 多数株を用いた本試験において観察された殺菌効果はT>MICと相関しており, 両者の相関関係を調べた結果, 24時間作用中のT>MICが40%程度まで達すると最大に近い殺菌効果が得られ, 25%程度まで達すると24時間培養後の生菌数が初菌数よりも低く維持できることが示された.
DRPMのMICが0.5μg/mL以下のEscherichia coli, メチシリン感性Staphylococcus aureus, Pseudomonas aeruginosa臨床分離株に対しては, DRPMを250mg×2回/日投与時の血中濃度推移をシミュレートした時に, 24時間あたり35%以上に相当するT>MICが得られ, 強い殺菌効果が観察された. この場合, 投与用量あるいは投与回数を増やした時に, T>MICは増加するものの殺菌効果の大きな改善は観察されなかった. 一方, MICが2μg/mL以上のP. aeruginosa臨床分離株については, DRPMを250mg×2回/日投与時の血中濃度推移をシミュレートした時に25%以下のT>MICが得られるにとどまった. このような場合には, 投与用量あるいは投与回数を増やす投与条件とし, T>MICを増加させることによって, 殺菌効果の増大が観察された. また, 1回あたりの投与用量を増加するよりも1日あたりの投与回数を増やすほうが, T>MICの増加の程度が大きく, 殺菌効果も大きく改善する傾向が観察された.
以上の結果より, doripenemの薬効をより有効に発揮できる用法・用量を推定するうえで, T>MICを指標にすることが有用であることが示唆された.

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