抄録
Vohconazole (VRCZ) は幅広い抗真菌スペクトルを有するトリアゾール系抗真菌薬であり, 注射剤と錠剤の2剤形をもつ。VRCZは経口投与でも消化管からの吸収に優れ, bioavailabilityも高い。ただし, 高脂肪食摂取後の投与では, 空腹時投与に比べて, 吸収速度の遅延がみられるため, VRCZは食間投与とすべきである。
VRCZは組織移行性も良好であり, その濃度は主要真菌のMICを上回っていた。脳・中枢神経への移行性も良好で, 投与後1~10時間の血漿中濃度に対する脳脊髄液中濃度の比は0.22~1.0 (中央値0.46) であつた。
VRCZは, CYP2C9, CYP2C19, CYP3A4によって代謝されるが, CYP2C19には遺伝子多型が存在し, 薬物代謝の個人差の一因と考えられている。日本人ではpoor metabolizer (PM) が約19%を占め, 第I相試験において遺伝子型別に血漿中VRCZ濃度を検討した結果, PMでは血漿中VRCZ濃度が高いことがわかった。ただし, 同じ遺伝子型の中でも個人間のばらつきは大きく, 患者における曝露量には全身状態や併用薬などの要因も影響すると考えられ, CYP2C19の遺伝子型のみから一律に投与量を決めることは困難である。
腎機能障害患者における投与は, VRCZは腎排泄型ではないため, 錠剤において用量調整の必要はない。しかし, 注射剤の添加剤スルポブチルエーテルβ-シクロデキストリンは腎排泄型であり, 腎機能障害患者で蓄積が生じる可能性がある。小児患者においては, 成人と比べて血漿中VRCZ濃度が低いが, これは, 小児では酵素活性が高くクリアランスが大きいためと考えられる。
本薬剤はloading doseが採用されており, 静脈内投与におけるloading doseは, 6mg/kgを12時間おきに1日2回投与, 2日目以降は維持療法として3mg/kg, 効果不十分の場合は4mg/kgの1日2回投与が勧められる。また経口投与においては, loading doseとして300mgを12時間ごとに2回, 2日目以降の維持用量は150~200mgが適当である。