日本化学療法学会雑誌
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全国多施設での院内肺炎の実態と初期治療におけるmeropenemの位置づけ
河野 茂渡辺 彰松島 敏春院内肺炎研究会
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2006 年 54 巻 5 号 p. 453-464

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抄録

日本呼吸器学会 (JRS)「呼吸器感染症に関するガイドライン-成人院内肺炎診療の基本的考え方-」に基づき, 院内肺炎の病態と初期治療の実態を調査し, メロペネム (MEPM) の院内肺炎初期治療における位置づけを検討した。2002年6月~2004年5月を調査期間として, 連続登録方式により院内肺炎症例をプロスペクティブに調査対象とし, 全国254施設より院内肺炎症例計1, 460例を収集し1, 356例を解析対象とした。初期治療におけるMEPM使用例は661例であり, そのうち506例 (76.6%) が単剤使用であった。他薬剤併用例では, 重症例を中心にクリンダマイシン, テトラサイクリン系薬, アミノ配糖体系薬の順に多く使用された。また, MEPMは重症例やJRS院内肺炎ガイドラインで規定された危険因子の多い症例に多く使用され, 病型別でも中等症で危険因子あり。または重症の肺炎 [III群: タイプC] や特殊病態下の肺炎 [IV群: タイプD~H] といった重篤な病態の症例が91.7% (606/661) を占めたが, MEPM初期治療使用例の有効率は54.4% (349/641) であり, カルバペネム系薬非使用例の有効率 (47.2%: 238/504) に比較して有意に高値であった。また, 初期治療におけるMEPM投与量は, 90%以上の症例が常用量 (0.25~0.5g×2回/日) であり, 1日3回投与や承認上限用量である1日2g投与が行われた症例は少なかった。院内肺炎の原因菌が緑膿菌等の抗菌薬に低感受性の細菌が主体であることも考慮すると, 次回ガイドライン改訂時にはPK/PD理論に基づいた抗菌薬投与量設定の重要性について言及する必要があるものと考えられた。安全性について, MEPM投与症例での主な副作用は肝機能障害であり, 添付文書の「使用上の注意」から予測できない重篤な副作用は認められなかった。以上の結果より, MEPMは院内肺炎の初期治療において重要な位置づけを占める薬剤であることが示唆された。

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