日本化学療法学会雑誌
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自殺遺伝子治療を目指した疾患細胞選択的な遺伝子発現制御法の開発
浅井 大輔中島 秀喜
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2008 年 56 巻 5 号 p. 538-542

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抄録

ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ遺伝子 (HSVtk) とガンシクロビル (GCV) を用いる自殺遺伝子治療法は, 一部の癌細胞にのみ遺伝子を発現させるだけで多くの癌細胞を治療できるという観点で注目された。しかし正常細胞にもHSVtkが発現し, 3リン酸化型GCVにより種々の細胞障害が起こり問題となった。本稿では, 癌細胞内のシグナル異常に着目した疾患細胞のみへの遺伝子発現手法の概念, すなわち標的細胞特異的に遺伝子を発現させる手法であるD-RECS (drug or gene delivery system responding to cellular signals) について報告する。遺伝子を内包するキャリアーとして, 種々の癌細胞内で活性が亢進しているIκBキナーゼ, プロテインキナーゼCα, Srcキナーゼに対する特異的な基質ペプチドを導入した高分子を調製した。遺伝子キャリアーの機能解析の結果, 各種細胞内で亢進しているキナーゼ活性に応じて遺伝子発現を制御することが可能であった。細胞内シグナルの異常は疾患の本質であり, 本法により自殺遺伝子治療法の改良が期待される。

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