日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
一般論文
ラット脂肪組織より分離した初代未分化細胞の増殖および脂肪細胞への分化に及ぼす共培養成熟脂肪細胞の影響
笠原 靖金澤 卓弥小杉山 基昭
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 73 巻 3 号 p. 431-439

詳細
抄録
成熟動物における脂肪組織量の増大は, 個々の脂肪細胞が肥大することのほかに, 未分化な細胞の増殖および分化による脂肪細胞数の増加が原因と考えられている. その脂肪細胞数の調節にはホルモンによる全身的な調節機序ばかりでなく, 組織内のパラクリン因子などの局所的な調節機序によることが予測されている. この局所的調節機序を解明するためには, 組織内のパラクリン因子を介した細胞間相互作用を再現することのできる培養系の開発が必要である. そこで, 成雄ラットの白色脂肪組織から分離した未分化細胞と成熟脂肪細胞とを共培養する新しい共培養法を考案し, 未分化細胞の増殖と脂肪細胞への分化に及ぼす成熟脂肪細胞の影響を調べた. 共培養は, 未分化細胞が接着した培養ウェルに, コラーゲンゲルを被覆して多孔膜上に固着させた成熟脂肪細胞を含むカルチャー・インサートを装着することにより行った. 対照は, 細胞を含まないコラーゲンゲルのみを固着させたカルチャー・インサートを装着した (単独培養). 培養液は10%ウシ胎児血清添加DMEMを用いた. 12日間培養した後, 単独培養と比較して共培養では, 未分化細胞の細胞DNA量がおよそ1.3倍に増加した. 単独培養では脂肪滴を持つ細胞の頻度が1.3%であったのに対し, 共培養では20.6%まで増加した. トリグリセリド含量およびグリセロール-3-リン酸脱水素酵素活性も単独培養と比較して共培養ではそれぞれおよそ1.9および1.8倍に増加した. 以上のことから, 成熟脂肪細胞はパラクリン様作用により未分化細胞の細胞増殖と脂肪細胞への分化を促進することが確認され, 本共培養法が組織内のパラクリン因子を介した細胞間相互作用を調べる上で有用であることが示唆された.
著者関連情報
© 2002 公益社団法人 日本畜産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top