2004 年 75 巻 2 号 p. 165-177
体細胞クローン牛を同一飼養条件で肥育し,その発育や枝肉成績に関して相似性の検討を行った.供試牛として,同時期に生産した黒毛和種の体細胞クローン牛2セット(去勢4頭,雌2頭)を用いた.それぞれドナー牛に準じた方法で肥育し,発育,飼料摂取量,枝肉成績および胸最長筋部分の理化学分析の結果について,クローン牛間およびクローン牛とそのドナー牛とを比較した.クローン牛間については,去勢牛群では,各調査項目において総じて高い相似性が見られたが,雌牛群では肥育期間中の疾病の影響により,発育や枝肉成績のうち肉量に関する項目において差が見られた.クローン牛とそのドナー牛では,試験時期や試験場所の違いによる環境要因があり,発育において差が見られたが,BMS No.や胸最長筋の粗脂肪含量においてその相似性がうかがわれた.肥育期間中の個体のコンディションにより,発育や肉量に関する形質に差が生じる場合があるものの,クローン牛間での相似性は高いと考えられた.