日本畜産学会報
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一般論文
馴致処理期間中の子牛によるヒトに対する模擬闘争行動の発達および行動的・生理的特徴との関係
安部 直重高崎 宏寿苗川 博史佐藤 衆介菅原 和夫
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2004 年 75 巻 2 号 p. 221-227

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抄録

80日齢の交雑種雄子牛12頭に,扱いやすさを改善する目的でブラッシングや声かけの馴致処理を1日5分,24日間実施したところ,その間にすべての個体がヒトに対する模擬闘争行動を発現した.発生した模擬闘争行動のうち頭突き行動発生回数における個体差は著しく,行動総発生回数では有意差(P<0.01)のある多発群6頭(297.1±120.5回/120分)および少発群6頭(70.5±21.3回/120分)が認められた.ヒトに対する頭突き行動多発群では維持行動および社会行動は調査期間中安定して発現し,驚愕刺激時の心拍数の変動率は少発群に比べてやや高く,去勢ストレス負荷後の血清コルチゾール値の変動率はやや低く,平常時血清テストステロン値は高い傾向にあった.これに対し,少発群では維持行動および社会行動は調査期間中に変動し,ストレスに対する生理的反応は多発群と異なり,血清テストステロン値は低い傾向にあった.これらの結果から,ヒトに対する頭突き行動多発個体は,行動的,生理的特徴から,これまで報告されたストレス研究における積極的行動タイプに属するウシである可能性が伺えた.

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© 2004 公益社団法人 日本畜産学会
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