日本畜産学会報
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一般論文
乳酸利用の増強によるルーメンアシドーシスおよびメタン生成の抑制
浅沼 成人日野 常男
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2004 年 75 巻 4 号 p. 543-550

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抄録

ルーメン内では,プロピオン酸生成とメタン生成の間に相反的関係があり,乳酸は主にプロピオン酸生成に用いられるので,乳酸利用の増加によりメタン生成が抑制されると考えられる.そこで,ルーメン内の乳酸利用菌数の増加が乳酸利用を増大させ,その結果としてメタン生成を低下させ得るか否かについて調べた.ルーメン微生物混合系にSelenomonas ruminantium亜種lactilyticaを添加したところ,乳酸利用の促進とメタン生成の低下が認められた.しかし,Megasphaera elsdeniiを添加した場合には,S. ruminantium亜種lactilyticaを添加した場合よりも乳酸消費量が多かったにもかかわらず,メタン生成量も多かった.これは,M. elsdeniiがH2を生成したためと考えられた.これら2菌をメタン菌と共培養した実験でも,M. elsdeniiの場合にだけメタンが生成された.一方,ヤギのルーメン内の主要な乳酸利用菌はM. elsdeniiと考えられ,S. ruminantium亜種lactilyticaの数は少なかった.以上より,ルーメン内のS. ruminantium亜種lactilyticaの増殖を促進するか,またはプロバイオティクスとして導入することにより菌数を増加させれば,乳酸の蓄積とメタン生成を同時に低下させ得ると考えられた.

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