日本畜産学会報
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75 巻, 4 号
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解説
  • 植竹 勝治
    2004 年 75 巻 4 号 p. 493-512
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    In the European Union (EU), the Council Directive 98/58/EC provides member states with general rules for the protection of animals kept for farming purposes such as the production of food, wool, skin or fur or for other farming purposes, including fish, reptiles of amphibians. The member states can adopt more stringent rules under the condition that they cover the provisions of the Treaty. At the present, the United Kingdom (UK) is one of the most radical member states. Newly-adopted legislation there concerning the welfare conditions of farm animals becomes obsolete in a few years in this age of rapid progress. The European Commission of the EU and the Department for Environment, Food and Rural Affairs (DEFRA) of the UK government financially support animal welfare research as part of a policy-orientated approach. Both policy makers consider all up-to-date scientific evidence and consult many different stakeholders such as farmers, industry, consumers, animal welfare groups and retailers in order to draft legislation and other proposals. Initially, the research was conducted mainly as part of the agriculture and fisheries program, but is now likely to have its place under the food quality and safety thematic priority. The Farm Animal Welfare Council (FAWC), established by UK government in 1979, plays an important role in reviewing the welfare of farm animals on farms, at market, in transit and at slaughter. The State Veterinary Service (SVS) under the DEFRA carries out welfare inspections for all stages of animal production in cooperation with local authorities and the Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals (RSPCA). Farm Assurance Schemes encourage producers who work in all the stages to raise welfare conditions of farm animals and, additionally, provide recognition of welfare standards to consumers. ‘Freedom Food’ is the first scheme set up by the RSPCA in 1994. To date nine schemes are operated under the Freedom Food Limited based on the species specific RSPCA farm animal welfare standards for pigs, dairy cows, sheep, beef cattle, laying hens, broilers, turkeys, ducks and salmon.
一般論文
  • 師 嘉, 喬 海生, 細井 栄嗣, 小澤 忍
    2004 年 75 巻 4 号 p. 513-519
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    東チベット高原で飼育されている青海黄牛母系の遺伝的多様性を調べるとともに,その遺伝的変異を和牛と比較検討することにより,家畜ウシの東アジアへの移動ルートを探り,黒毛和種の遺伝的起源に関する仮説を提示した.青海黄牛27頭の毛根よりDNAを抽出し,ミトコンドリアDNAのD-loop領域における塩基配列を調べた.その結果,青海黄牛の母系はヤク(Bos grunniens)に由来する群(4頭),Bos indicusに由来する群(2頭),Bos taurusに由来する群(21頭)の3つに分類された.さらにBos taurusに分類された21頭には,17のハプロタイプが存在していることから,青海黄牛の母系は著しく遺伝的多様性に富んでいることが明らかになった.Bos taurus型の17のハプロタイプから作成した系統樹から,青海黄牛は東アジア型,ヨーロッパ型およびアフリカ型の3つのクラスターに分類された.これら3つのクラスターのうちの東アジア型およびヨーロッパ型の2つには,それぞれ黒毛和種にきわめて近いタイプあるいはまったく一致したタイプが存在したことから,青海黄牛のBos taurus型の一部は黒毛和種と共通祖先を有するものと推察された.
  • 大澤 剛史, 長谷川 未央, 口田 圭吾, 日高 智, 関川 三男, 佃 秀雄
    2004 年 75 巻 4 号 p. 521-526
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    枝肉横断面の主要な筋肉の面積ならびに筋肉内の脂肪交雑割合,皮下脂肪および筋間脂肪の面積を画像解析により測定し,従来の枝肉格付形質と画像解析形質との遺伝的関連性について調査した.黒毛和種間接検定材料牛404頭の枝肉横断面画像,格付記録および血統記録を用いた.一定範囲の枝肉横断面画像から,胸最長筋,僧帽筋および広背筋の面積ならびに各筋肉内の脂肪面積比,胸最長筋-背半棘筋-頭半棘筋に囲まれた筋間脂肪,胸最長筋-頭半棘筋-背多裂筋-腸肋筋に囲まれた筋間脂肪,僧帽筋および広背筋外側の皮下脂肪,それら筋肉内側の筋間脂肪の面積を測定した.また,枝肉横断面の実面積に対する各形質の実面積の占める割合(以下,面積%)を測定した.各皮下脂肪および各筋間脂肪の面積%に関する遺伝率は,それぞれ0.58~0.72および0.37~0.71と中程度から高い範囲にあった.皮下脂肪と筋間脂肪の面積%間の遺伝相関(0.15)は低い値であった.BMSナンバーと強い関連性を持つ胸最長筋内脂肪面積比と皮下脂肪の面積%間の遺伝相関は,-0.28~-0.08と負の値を示し,筋間脂肪においては逆に0.17~0.22と正の値を示した.
  • 窄山 れい, 谷口 幸雄, 北川 政幸, 山田 宜永, 佐々木 義之
    2004 年 75 巻 4 号 p. 527-533
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    牛肉の経済価値を決定する上で重要な形質となっている脂肪交雑を,肥育開始前あるいは肥育開始後の初期に早期判定する技術の確立が望まれている.そこで,脂肪交雑早期判定の手掛りを得る目的のもとに,脂肪細胞への分化の促進に関わる核内転写因子,CCAAT/enhancer-binding protein (C/EBP)α, C/EBPβ, C/EBPδ, およびPeroxisome proliferator-activated receptor (PPAR) γの最長筋での月齢にともなった発現パターンを,脂肪交雑の能力に遺伝的な差をもつ黒毛和種牛とホルスタイン種牛との間で比較した.各品種3頭について,最長筋サンプルを2ヵ月齢から2ヵ月ごとに16ヵ月齢まで,バイオプシーにより採取した.各遺伝子の発現レベルはcompetitive PCRにより測定した.その結果,ホルスタイン種に比べて,黒毛和種では,最初にC/EBPδの発現が有意に上昇し(6ヵ月齢でP<0.01),6ヵ月齢をピークに減少する,6ヵ月齢からC/EBPβの発現が有意に上昇する(8ヵ月齢でP<0.01),さらに肥育開始後においてPPARγの発現が有意に上昇する(16ヵ月齢でP<0.01)という特有な変化パターンが認められた.このように,若齢期に品種間に差があり,しかもその差とBMSナンバーとの間に関連が認められる遺伝子を同定することで,肥育開始前にウシ脂肪交雑を早期判定することが可能になると考えられる.C/EBPβおよびC/EBPδはその候補となるかもしれない.
  • 松山 裕城, 堀口 健一, 高橋 敏能, 萱場 猛夫, 石田 元彦, 塩谷 繁, 西田 武弘, 細田 謙次, 額爾敦 巴雅爾
    2004 年 75 巻 4 号 p. 535-541
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    圧ペン大麦主体の濃厚飼料を多量に給与した去勢牛において,第一胃刺激用具(RF)の投与が採食と反芻時間,第一胃収縮運動,液相部と固相部の第一胃通過速度および第一胃内容液性状に及ぼす影響について検討した.供試動物は第一胃フィステル装着ホルスタイン種去勢雄牛3頭(平均体重519kg),給与飼料はチモシー乾草,圧ペン大麦および大豆粕を用いた.給与飼料における粗飼料の割合を,乾物換算で10%とした.給与量は,維持を満たす代謝エネルギー量の2倍とした.RFは1頭あたり3個,第一胃フィステルを通して投与した.結果は以下の通りであった.1)RFを投与すると,乾物摂取量あたりの反芻時間は有意に長くなった(P<0.05).第一胃収縮運動の頻度は,対照処理で1,463回/日,RF投与処理で1,968回/日であり,RFの投与によって増加する傾向があった(P<0.10).2)液相部の第一胃通過速度定数は,RFを投与すると有意に増加した(P<0.05).3)第一胃内容液のpH,揮発性脂肪酸濃度およびその組成は,RFを投与しても,ほとんど影響を受けなかった.これらの結果から,RFの投与によって反芻時間が長くなった原因は,第一胃収縮運動の促進が有力であると考えられた.また,液相部の第一胃通過速度は,反芻時間が長くなったことで分泌が促進したと思われる唾液の影響を受けたと考えられた.
  • 浅沼 成人, 日野 常男
    2004 年 75 巻 4 号 p. 543-550
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    ルーメン内では,プロピオン酸生成とメタン生成の間に相反的関係があり,乳酸は主にプロピオン酸生成に用いられるので,乳酸利用の増加によりメタン生成が抑制されると考えられる.そこで,ルーメン内の乳酸利用菌数の増加が乳酸利用を増大させ,その結果としてメタン生成を低下させ得るか否かについて調べた.ルーメン微生物混合系にSelenomonas ruminantium亜種lactilyticaを添加したところ,乳酸利用の促進とメタン生成の低下が認められた.しかし,Megasphaera elsdeniiを添加した場合には,S. ruminantium亜種lactilyticaを添加した場合よりも乳酸消費量が多かったにもかかわらず,メタン生成量も多かった.これは,M. elsdeniiがH2を生成したためと考えられた.これら2菌をメタン菌と共培養した実験でも,M. elsdeniiの場合にだけメタンが生成された.一方,ヤギのルーメン内の主要な乳酸利用菌はM. elsdeniiと考えられ,S. ruminantium亜種lactilyticaの数は少なかった.以上より,ルーメン内のS. ruminantium亜種lactilyticaの増殖を促進するか,またはプロバイオティクスとして導入することにより菌数を増加させれば,乳酸の蓄積とメタン生成を同時に低下させ得ると考えられた.
  • 岡野 寛治, 北尾 玲子, 三木 聡子
    2004 年 75 巻 4 号 p. 551-557
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    食用担子菌のエリンギ(Pleurotus eryngii)およびトキイロヒラタケ(P. salmoneostramineus)をコーンコブミール・米ヌカ培地で栽培し,菌種,培地の充填密度および栽培期間が,子実体収量,培地の消化性および繊維成分に及ぼす影響を検討した.コーンコブミールと米ヌカを風乾重量比9 : 1の割合で混合し,さらにその重量の0.5%量のCa(OH)2を添加し,水分含量を65%とし,培地を調製した.850ml容のキノコ栽培瓶に培地を540gまたは440g詰め,殺菌後,エリンギあるいはトキイロヒロタケの種菌を接種した.菌糸が蔓延するまで20℃の培養室で培養し,エリンギは15℃で,トキイロヒラタケは20℃で子実体の発生を促した.菌種,培地充填密度,栽培期間および子実体収量の異なる培地を採取し,繊維成分組成,インビトロ有機物および中性デタージェント繊維(NDF)消化率と24時間および48時間のガス生産量を測定した.殺菌前の培地の有機物消化率は64.7%,NDF消化率は61.2%であった.充填密度の低い培地にエリンギを112日間およびトキイロヒラタケを113日間栽培した培地の有機物消化率は,88.7~91.5%,NDF消化率は84.1~88.3%へと上昇し,24および48時間でのガス生産量も増加した.トキイロヒラタケを43日間栽培した充填密度の低い培地では,子実体が発生したにもかかわらず,有機物消化率はわずか2.1ポイントの上昇で,NDF消化率は4.5ポイント低下し,そしてガス生産量は減少した.トキイロヒラタケの子実体が発生しなかった充填密度の高い培地では,栽培日数106日と218日の間には繊維成分組成,有機物消化率,NDF消化率およびガス生産量に差はみられなかった.エリンギの子実体が発生した充填密度の高い培地では,栽培日数125日に比べて148日の培地で,ヘミセルロースおよびリグニン含量は低く,有機物およびNDF消化率は高く,ガス生産量は大きかった.
  • 額爾敦 巴雅爾, 西田 武弘, 松山 裕城, 細田 謙次, 塩谷 繁
    2004 年 75 巻 4 号 p. 559-566
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    ウシにおける緑茶飲料製造残渣サイレージの栄養価を求めると共に窒素およびエネルギー出納に及ぼすポリエチレングルコール(PEG)の影響を調べた.チモシー乾草,圧ぺんトウモロコシと大豆粕を組成とした基礎飼料のみを給与(対照区),乾物(DM)比で基礎飼料の20%を緑茶飲料製造残渣サイレージに置換(茶殻区)およびPEGを茶殻区の飼料中タンパク質量の1/5となるように添加(PEG区)する3試験区を設けた.各区にホルスタイン種去勢ウシ2頭ずつを割り当て,3×3のラテン方格法による消化試験を実施した.間接方法により求められた緑茶飲料製造残渣サイレージのDM中可消化養分総量(TDN),可消化エネルギー(DE)および代謝エネルギー(ME)は,それぞれ69.8%,13.0MJ/kgと10.5MJ/kgであった.PEG区では,茶殻区に比べ粗脂肪(EE)の消化率が有意に減少した(P<0.01)ものの,粗タンパク質(CP)の消化率が有意に上昇した(P<0.05).PEGに添加により,糞への窒素排出量は有意に減少した(P<0.05)が,尿中への窒素排出量が増加したため,体内窒素蓄積量は増加しなかった.以上の結果から,緑茶飲料製造残渣サイレージのウシでの栄養価が明らかとなり,PEGの添加により緑茶飲料製造残渣サイレージに由来するタンニンとタンパク質の結合が解離する可能性が示唆された.
  • 宮地 慎, 上田 宏一郎, 山田 文啓, 小林 泰男, 秦 寛, 中辻 浩喜, 近藤 誠司
    2004 年 75 巻 4 号 p. 567-572
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    北海道和種馬に同一原料牧草(チモシー)から調製した無細切の乾草およびサイレージを乾物で同量(2.2%BW)給与し,消化率,咀嚼活動,糞の粒度分布および消化管内容物の平均滞留時間を比較検討した.乾物および繊維成分の消化率には飼料間で差はなかった.乾物摂取量あたりの咀嚼回数は乾草よりサイレージが多かったが(4.6 vs. 5.3回/gDM, P<0.05),糞の粒度分布は乾草摂取時よりもサイレージ摂取時が大粒子画分(2.36mm以上)の割合が高く(29 vs. 51%, P<0.05),小粒子画分(0.30mm以上1.18mm未満)の割合が低かった(35 vs. 23%, P<0.05).消化管内容物の平均滞留時間は,乾草よりもサイレージが,液相(21.1 vs. 16.9h, P<0.01)および飼料全体(23.7 vs. 21.8h, P<0.05)ともに短く,また両飼料とも液相よりも飼料全体が長かった(P<0.01).葉部および茎部の滞留時間には両飼料とも差がなかった.
  • 口田 圭吾, 高橋 健一郎, 長谷川 未央, 酒井 稔史, 森田 善尚, 堀 武司
    2004 年 75 巻 4 号 p. 573-579
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    16名の判定者が同一の枝肉についてBMSナンバーを評価し,BMS判定値に個人差が大きかった枝肉横断面の肉眼的特徴を画像解析により把握すること,ならびに画像解析形質を利用してBMSナンバーを推定することを目的とした.材料は,牛枝肉撮影装置で撮影された黒毛和種去勢肥育牛100頭の第6-7肋骨間の鮮明な枝肉横断面画像である.16名により評価されたBMSナンバーについて,それぞれの枝肉における16名のBMSナンバーの平均値(平均BMS),最頻値,中央値,16名からのBMSナンバーを昇順に並べ上下3名の評価値を除いた平均値,上下2名の評価値を除いた平均値および上下1名の評価値を除いた平均値の6変数を算出し,それぞれの変数間の相関係数を求めた.また,画像解析により脂肪面積比,全体の粒子のあらさ,最大粒子のあらさ,単独粒子のあらさ,ロース芯の短径・長径比およびロース芯形状の複雑さを算出し,BMS判定値に個人差が生じる要因を検討した.BMSナンバーの判定値に関わるすべての変数間には,非常に高い相関係数が認められた(0.938~1.000)ため,判定値を代表する変数として平均BMSを用いることとした.BMS判定値に個人差が生じる要因を解析したところ,BMS評価のばらつきに対して,最大粒子のあらさならびにロース芯の短径・長径比が有意(P<0.05)に影響していた.平均BMSを従属変数,画像解析形質を独立変数候補とした重回帰分析を行ったところ,選択された変数はロース芯面積,脂肪面積比,全体の粒子のあらさおよび最大粒子のあらさの4変数であり,重回帰式の決定係数は0.895であった.以上のことから,ロース芯内の脂肪交雑粒子があらい,ロース芯の形状が扁平であるなどの枝肉については,BMSナンバーの判定値にばらつきが生じやすいことが確認され,それらの影響を取り除くことで,高い精度でBMSナンバーを推定可能となった.
  • 敖日格楽 , 竹田 謙一, 松井 寛二
    2004 年 75 巻 4 号 p. 581-586
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    黒毛和種繁殖雌牛26頭を用いて,放牧牛に飛来する昆虫数と身繕い行動回数を調査し,その個体差の程度について検討した.また,供試牛の気質を調べ,飛来昆虫数および身繕い行動回数と気質との関係についても調べた.供試牛の飛来昆虫数と身繕い行動を1頭あたり5分/回,計2回観察し,供試牛の気質は4段階に分けて記録した.その結果,飛来昆虫数はもっとも多い個体で415匹/観察,もっとも少ない個体で38匹/観察,身繕い行動回数はもっとも多い個体で95.5回/5分,もっとも少ない個体で19回/5分であり,飛来昆虫数および身繕い行動回数ともに観察値は期待値から有意に偏っており(それぞれP<0.001),顕著な個体差が認められた.身繕い行動回数は気質評点1(おとなしい)の個体より,気質評点3(落ち着きがない)および気質評点4(神経質)の個体の方が有意に多かった(P<0.05).しかし,飛来昆虫数には個体の気質評点の違いによる有意な差は認められなかった.以上より,神経質な個体ほど頻繁に身繕いを行うことが示唆された.
  • 高橋 正宏
    2004 年 75 巻 4 号 p. 587-598
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/26
    ジャーナル フリー
    堆肥化過程における有機物分解をデタージェント分析の手法を用いて評価することが可能か検討した.試験材料には消石灰を添加した豚糞モミガラ堆肥を用いた.堆肥化過程の細胞内容物質(OCC),酸性デタージェント繊維(ADF),中性デタージェント繊維(NDF),NDF-ADF,酸性デタージェントリグニン(ADL),中性デタージェントリグニン(NDL)の含有率および分解率について調べた.消石灰添加によってリグニンや繊維成分が減少し,分解率の高い分画に移行した.消石灰添加は12ヵ月間で分解可能な有機物の総量を増加させないが,分解速度を速める効果があった.NDF-ADFは2週後に分解が一気に進み,もっとも分解率の高い成分となった.ADLはほとんど分解しなかったが,NDLは少し分解し,NDLとADLの値が逆転した.NDF-ADFおよびNDLは2週目からほぼ同時に分解し始めた.堆肥化過程のリグニン分解を調べるにはNDLが適していた.豚糞のNDF-ADFは4週後にほぼ100%分解したが,モミガラのNDF-ADFは12ヵ月後でも30%程度の分解率であった.豚糞ではADLだけがほとんど分解しなかったが,モミガラではNDF, NDL, ADF, ADLがほとんど分解しなかった.モミガラの酸性デタージェント溶液(AD)可溶有機物は易分解性有機物ではなかった.豚糞モミガラ堆肥についてデタージェント分析を用いて堆肥化過程の有機物分解の特徴について調べることが可能であった.
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