動物資源の永続的な保全と利用という畜産系の教育研究の使命から見た時,野生動物の飼育動物化(家畜化,愛玩動物化,実験動物化,展示動物化)と標本化は重要な視点である.野生動物に関係する法律の制改訂が,生物多様性条約の批准以後,立て続けに行われ,また国家的な感染症対策からも野生動物の国内への持ち込みは厳しく制限されるようになっている.諸外国においても国家戦略のもとで,資源としての野生動物の国外持ち出しには監視と制約を課している.こうした中で動物資源という科学の基盤となる領域でだれがどのように貢献するのか,という命題に突き当たる.そこでは動物資源がだれでも,どこでも,いつでも,利用できるようにする,という観点が重要であり,そのために野生スンクスなどの飼育動物化や野生哺乳類の標本化の実践例を紹介した.これらの活動は農学系が持っている広い土地と施設が有効に作用する.また生命体としての動物の生と死を扱う畜産領域出身者がインパクトをもって貢献できる現場の1つということであり,まさに畜産領域出身者の出番である.