2009 年 80 巻 4 号 p. 451-456
夏期の放牧時の暑熱対策として,ひ陰舎の防暑効果を明らかにすることを目的として,放牧地に遮光率51%, メツシュ1×1 mmの黒色寒冷紗を2枚重ねたひ陰舎を設置した. 環境温度として乾球温度(DBT),湿球温度(WBT),黒球温度(GT)を日射下とひ陰下で測定した.ウシの生理指標として直腸温(RT),平均体温(Tb),呼吸数(RR)などを日射下とひ陰下で,黒毛和種繁殖雌牛について,3日間ずつ測定した.環境温度についてはGTが日射区とひ陰区とで大きく異なり,日射を考慮した体感温度ET(DBT, GT)に有意差が認められた.生理指標は,日射区とひ陰区間でRTは差がはっきりしない場合があったのに対して,Tbは常に1%水準で有意差が認められた.また,ひ陰区ではRRの上昇が抑制されており,日射区で認められたパンティングが認められなかった.以上のことから,寒冷紗を用いたひ陰舎は,夏期の放射熱を防ぎ,黒毛和種繁殖雌牛の暑熱防止に有効であると考えられた.