2013 年 84 巻 1 号 p. 81-88
採草地におけるシカ侵入防止法を確立するために,3段および4段張り電気柵(以下,3WFおよび4WF)を提示した場合の飼育シカの行動反応を解明し,採草地での野生シカに対する侵入防止効果を比較検討した.1)24時間絶食させたシカと飼槽を隔てる形で4WF(高さ140 cm)を設置した.シカは試験開始直後に口唇で30および60 cmの電線に接触し,感電により60∼100 cmの電線間に向かって飛び込み,飼槽側に侵入したものの,忌避学習成立後の侵入は皆無であった.一方,3WF (高さ100 cm)に対し,シカは最上段の電線を飛び越え,飼槽側に侵入した.2)採草地では,4WFを設置した区(1 ha)ではシカの侵入が皆無であったのに対し,3WFを設置した区(1 ha)へのシカ侵入頭数が多く,植物現存量は後者に比べ前者で有意に高い値を示した(P<0.05).以上より, 4WFは3WFに比べ高い侵入防止効果を示し,とくに140 cmの高さに張った電線は飛び越えによる侵入を防ぐ視覚的な効果を持つ可能性が示された.