抄録
家畜の視覚弁別実験では,実験場所に設置した待機室から放たれた被験体が弁別刺激に向かって行き,弁別反応後に再び待機室へ戻る方式が一般的である.この方式では実験者が待機室の扉を開く操作によって試行が開始される.これに対して,マウスの選択行動研究において,待機室がない条件下で被験体自らが試行開始操作を行うセルフスタート法を用いた実験が行われている.本研究では3頭の去勢成豚を用いて明暗弁別実験に同法の導入を試みた.実験豚房内の弁別反応装置の対面壁にセルフスタート反応装置を設置した.被験体がセルフスタート反応を行うことによって試行が開始され,弁別反応装置に移動して反応し,セルフスタート反応装置に再び移動する方法を用いた.その結果,いずれの被験体も実験期間中の試行が安定して進行し,弁別水準に達した.このことから,ブタにおいて同法を用いた弁別実験が可能であることが示された.