生時より4年10ヶ月に亙る健康豚31頭の睾丸内脂肪物質を觀察して次の如き結果を得た。
(1) 豚睾丸に認められる脂肪物質はズダンIII染色により淡黄色-眞赤色を呈し,SMITH-DIETRICH氏法に陽性で,FISCRLER氏法に不明なる中性脂肪及び狹義類脂肪である。
(2) 細精管内の脂肪物質は年齡的に明かにその出現部位を異にし,幼若期のものに於ては主として細精管の中腔部に存在するが,睾丸重量概ね10g以上(73日齡以上),細精管口徑約80μ以上に逹し,精母細胞の分裂像を認める細精管が増加し或は一部精娘細胞の出現する時期に及べば脂肪物質は細精管周縁に壁在して所謂脂肪周邊層(Fettrandzone)を形成し始め,中腔部のものは逐次消失する。次いで精子の生成された後は精子生成層にも細粉状の脂肪顆粒層が出現し,上記の脂肪周邊層と共に内外2層の配列を示すがこの状態は5ヶ月齡以後のものに於て一層明かである。
(3) 間質内の脂肪物質は既に生時より存在するが,造精現象が旺盛となり副睾尾精子の發育が顯著となる5ヶ月齡以後のものに於て増量する。