日本畜産学会報
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尿素の毒性並びにその防除に関する研究
II 家兎及び山羊に対するアンモニウム塩並びに尿素の毒性
吉田 条二中目 公男中村 亮八郎
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1957 年 28 巻 3 号 p. 185-191

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抄録

1. 正常な白鼠, 家兎, 山羊の血中アンモニア態-N (NH3-N), 尿素態N (urea-N) の含量を測定した結果, いずれにおいてもNH3-Nは約0.9mg/100cc, urea-Nは約30mg/100cc以下であるなら, 平常値と認めうるとの結果を得た。
2. 白鼠の血中に炭酸アンモニウム, 尿素を注入してNH3-N, urea-Nの毒性を検した結果, 炭酸アンモニウムはurea-Nとして血液100cc中8mgになるように注入すると死亡したが, 尿素は1500mgになるように注入してはじめて死亡した。
3. 家兎及び山羊に炭酸アンモニウム, 塩化アンモニウム溶液をカテーテルで胃中に注入した結果, 尿素換算1g Prokgで家兎, 0.89Prokgで山羊は, 症状においても, 血中NH3-Nの濃度においても, 尿素中毒症と酷似の症状で死亡し, 家兎, 山羊の間に死亡時の給与量に大差が認められず, また血中urea-Nの濃度の増加は認められなかった。
4. アンモニウム塩給与の際, 溶液のpHを酸性にすると, 症状発現までの時間の延長, あるいは症状軽減の傾向が認められた。また胃内容物の多少により症状発現経過時間に長短を生じた。
5. 家兎に尿素溶液をカテーテルで胃中に注入した結果, 6gprokgでアンモニウム塩の場合と同様な症状経過で死亡した。しかし尿素給与の前歴を有する家兎では耐性を生ずるようであつた。燐酸緩衝液との併用や団魂にして給与した効果は認められなかつた。
6. 正常, 耐過および死亡例における門脈, 肝静脈, 心臓血中のNH3-Nは, 門脈血中で心臓中の約2倍の高濃度を示し, 以下順次低下したのに対し, urea-Nの濃度は3カ所ともほとんど差がなかつた。即ち, 尿素が門脈にはいる前に分解されて, そのNがNH3-Nに変じ, 肝臓はこれが循環系へそのまま逸出することを制御するが, 尿素は見掛け上肝臓を素通りすることが認められた。
7. 山羊, 家兎において, 症状の進行とともに血中NH3-N, urea-Nが増加して, 死亡時に極大値を示し, NH3-Nが増加して, ある水準に達しなければ, urea-Nが増加しても症状を発現しないことを認めた。
8. 家兎に尿素を給与した場合, 胃および腸内容物中のNH3-Nが増加することを認めた。
9. 以上の事実から, 中毒の直接原因は, 血中に増加するNH3-N部分にあるとの推定が有力である。

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