日本畜産学会報
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神経分泌と前葉細胞
IV. 副腎除去および温度処理後の家兎の下垂体前葉細胞の変化と神経分泌との関連
中原 達雄
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1962 年 33 巻 5 号 p. 393-400

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抄録

副腎除去後の家兎の視床下部における神経分泌は,除去後1日および3日では,視索上核および脳室旁核の細胞に空胞形成や顆粒の減少を伴う,著しい亢進を示す.除去後5日および8日では,神経分泌細胞および後葉に次第に顆粒が増加し,分泌機能は正常に近くなる.前葉では,除去後1日に酸好性細胞が肥大増数し,塩基好性細胞が減少する,除去後3日,5日および8日には好性細胞が次第に減少し,塩基好性細胞と色素嫌性細胞が多くなる.
低温処理動物の視床下部における神経分泌は,10分および20分間処理の場合には極度に亢進し,視索上核および脳室旁核の細胞に著しい顆粒の減少がみられる.後葉では,時間の経過につれて,顆粒が減少する.30分および1時間処理の場合には,神経分泌細胞の顆粒は次第に増加して,対照と変わらなくなる.前葉では,10分間処理の場合は,酸好性細胞が肥大増数し,20分および30分間処理の場合は,酸好性細胞,塩基好性細胞ともに,顆粒の減少を示す.
高温処理動物の視床下部における神経分泌は,10分および20分間処理の場合には,いずれも著しい亢進を示し,視索上核および脳室旁核の細胞に空胞形成や顆粒の減少がみられる.前葉では,10分間処理では酸好性細胞が増加し,塩基好性細胞の顆粒が減少する.20分間処理は酸好性細胞が減少し,塩基好性細胞が多くなる.以上の結果から,家兎において,副腎除去および温度処理は,いずれも,その初期に,視床下部における神経分泌の亢進を起こし,その分泌物の一部は前葉に進入し,前葉の酸好性細胞に肥大と増数を起こさせ,塩基好性細胞には,主として顆粒の放出を行なわせるものと想像される.

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