1. 下垂体茎を遮断すると,前葉では,酸好性細胞が極度に減少し,形も小さくなる.塩基好性細胞は増加するが,その形は非常に小さくなる.
2. 甲状腺除去の後,下垂体茎を遮断すると,前葉では,塩基好性細胞の数は増加するが,肥大した甲状腺除去細胞は極度に減少する.
3. 甲状腺除去の後,下垂体に後葉ホルモンを連続注射すると,前葉では,甲状腺除去細胞が消失し,酸好性細胞の増加と,gonadotrophsの増数肥大がみられる.
4. 下垂体に後葉ホルモンを連続注射すると,前葉では,酸好性細胞が著しく増加し,塩基好性細胞が減少する.皮下に後葉ホルモンを連続注射すると,前葉では,酸好性細胞の増数と,塩基好性細胞のうちgonadotrophsの増数肥大がみられる.
5. 内頸動脈に後葉ホルモンを注射すると,前葉では,酸好性細胞と塩基好性細胞に,顆粒の減少と空胞形成が認められる.
6. 高張食塩水を注射すると,視床下部-下垂体後葉神経分泌系では顆粒が減少し,視床下部の神経分泌性神経細胞は分泌亢進を起こす.前葉では,酸好性細胞に顆粒が減少し,塩基好性細胞は周辺部に空胞を形成する.
7. 交尾後15分以内に下垂体茎を遮断すると,前葉の酸好性細胞および塩基好性細胞には,まつたく顆粒の減少がみられない.20分以後に遮断すると,酸好性細胞は顆粒を減少し,塩基好性細胞は周辺部に空胞を形成し,いずれの細胞体も小さくなる.
8. 下垂体を除去した家兎の視索上核および脳室旁核の細胞には,本実験期間では,対照と比較して,余り変化がみらなかつた.下垂体を除去した後の視床下部の腹側部では,血管の周囲に,多量の神経分泌物の集合がみちれる.
以上の結果から,前葉細胞の機能は,後葉物質によつて支配されているものと推論される.
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