日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
めん羊の呼吸数におよぼす乾球温度と湿球温度の影響
山本 禎紀山岸 規昭津田 恒之
著者情報
ジャーナル フリー

1967 年 38 巻 7 号 p. 299-304

詳細
抄録

呼吸数をはじめ二,三の生体反応は環境温湿度条件によく反応することが知られている.そのため家畜の能力や,家畜のおかれた環境の評価を,生体反応を手がかりとして行なう試みがある.このような場合温度と湿度の二つの作用が明瞭に分離され,そのおのおのについて考察し得るものであることが望ましい.本実験ではこの点について,めん羊で検討した.
実験は乾球温度(DBT)と湿球温度(WBT)を種々組合せた11の実験条件下に,コリデール種成雄めん羊(BW.57kg,毛の長さ約7cm)をおき,3時間生体反応を観測した.
DBTとWBT両者の影響は呼吸数,毎分呼吸気量および体表温の変化に認められたが直腸温には明らかでなかつた.
このうちWBTの影響を呼吸数についてみると,DBTの高さにより異なるもので,DBT35°CではWBT1°Cの上昇につき19.8回/分の増加であつた.同様に30°C.16.0, 25°C•12.9, 20°C•6.1回/分の増加であつた.高温になるにしたがつて,WBTの影響が大きくなることを示している.
さらに呼吸数を空気中の水蒸気量(g/m3)と関係付けてみると,DBTが25~35°Cの間において,DBT1°Cの上昇につき5~7回/分の増加,水蒸気量1g/m3の増加につき8~10回/分の増加と,温度と湿度の影響を分離して考えることができることを示した.
呼吸数を指標に,めん羊におよぼすDBTとWBTの作用を適当に重みずけし,二つの環境要因を一つの尺度で表わすとほぼDBT×0.1+WBT×0.9とすることができた.この値はWBTの見積りが牛や子豚で求められているものよりも高く,蒸散による体温調節能に優ることを暗示した.

著者関連情報
© 社団法人日本畜産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top