日本畜産学会報
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鶏腸管におけるアミノ酸吸収の部位による変動
横田 浩臣田先 威和夫
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1970 年 41 巻 4 号 p. 209-215

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抄録

鶏腸管からのアミノ酸吸収が,腸部位によって,どのように変動するかを観察するために本実験を実施した.
実験鶏として,約4カ月令,体重1.3-1.8kgの白色レグホン種雄を使用した.小腸を十二指腸,空腸前部および後部,回腸前部および後部の5部位に分け,田先•高橋のin sltu還流装置を用い,Krebs-Ringer phosphate bufferに10mMの濃度に溶解したアミノ酸について,1時間の還流実験を行なった.
中性アミノ酸であるL-メチオニンおよびL-アラニンは,回腸でよりも十二指腸および空腸で多く吸収された.D-メチオニンとD-アラニンは,回腸下部で最大吸収を示した.フェニールアラニンは,L型もD型も部位が下るほど吸収量は多くなった.塩基性アミノ酸のリジンは,空腸および回腸に比較して,十二指腸での吸収量は多く,D-リジンの吸収量は空腸で多かった.リジンの特徴は,十二指腸および回腸上部を徐いて,L型とD型の吸収量がよく似ていることである.酸性アミノ酸であるL-グルタミン酸は,空腸下部および回腸下部で吸収量は多い.D-グルタミン酸は,十二指腸および空腸上部で吸収量が少ない.また,L型がD型より全部位を通じて吸収量が多かった.動物体内では代謝されないとされているα-アミノイン酪酸は,L-リジンとほぼ同程度に吸収された.
α-アミノイソ酪酸が単純拡散で吸収されると仮定すると,おのおのアミノ酸の吸収率とα-アミノイソ酪酸のそれとの比は,各アミノ酸の活性吸収の程度を示す指標になると考えられる.この比より判断すると,L-メチオエン,L-アラニン(空腸は徐く)およびL-フェニールアラニンはすべての部位で活性吸収が行なわれているが,L-リジンおよびD-リジンはむしろ拡散により吸収されるものと考えられる.L-グルタミン酸は,部位により活性吸収が存在する.D型アミノ酸では,多くの場合,特にD-フェーニルアラニンやD-グルタミン酸などで,白己吸収抑制作用があらわれて,吸収が阻害される.

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