日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
マウス乳腺の核酸とくにリボ核酸量におよぼす選抜近交の効果
II. 乳腺のRNA/DNA比の選抜の効果
宋 永義
著者情報
ジャーナル フリー

1970 年 41 巻 4 号 p. 197-208

詳細
抄録

泌乳機能の改良の指標として乳腺の核酸量を取り上げ,そのRNA/DNA此に対する13世代にわたる選抜近交の効果をまとめた.
供試動物は非近交CFW系マウスで,交配は兄妹交配を行ない選抜方法は個体選抜であった.
まず第2産次泌乳第12日令の母鼠ソケイ部乳腺を左右に分け採取,核酸を抽出測定,その総DNA含量が世代内mean-s. d.以上でかつRNA/DNA比が高いものから3個体選び,その第1産子を繁殖に供した.選抜は第1,2世代に行ない引続き,第4,6…12世代と偶数世代に実施した.
なお対照区として同じ基礎集団から選抜をせずに近交のみを行なったマウス群をとった.
第13世代までの結果を要約すると
1) 泌乳関係形質の累代変化について
新鮮乳腺重量,脱脂乾燥乳腺重量,総DNA量,総RNA量,RNA/DNA比の世代に対する回帰はいずれも正の回帰であったが有意性を示したのはRNA量のみであった.しかしそれら諸形質を対照区での近交退化の悪影響を勘案すると多くのものの選抜効果は有意であった.
RNA/DNA比の遺伝率を世代平均回帰と選抜差の累積回帰の比で求めた結果2=0.0998でかなり低く,環境の影響が強く出,また近交の悪影響を受けやすいことが判った.
2) 母における関連形質の変化について
母体重の変化は負の回帰を示したが,対照とした非選抜近交系での回帰を考慮に入れるとその回帰は正の変化を示した.
一腹子数の減小は有意でなかった.これは乳腺機能に対する選抜は間接的に繁殖関係の形質によい影響をあたえているのではないかと考えられる.
3) 子体重の変化について
初産次子体重を0,5,10,20,25日令,2産次は0,5,8,10,12日令に測定したが,近交退化の現象が見られ累代的に減小の傾向を示した.しかし有意の減小を示したのは10日令体重であった.乳腺機能の選抜による泌乳の増加は近交による子体重の減小をある程度補償しているが10日令では哺乳力が弱いため子体重の低下が顕著に出るのではないかと考えられる.
諸形質の成績を綜合的に考えると,泌乳機能の選抜近交実験においてはさらに選抜強度を高め近交退化の影響を除去できればその効果はさらに明らかになるのではないかと考えられる.

著者関連情報
© 社団法人日本畜産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top