日本畜産学会報
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雌鶏卵管内における精子の受精能力保持に関する研究
田中 耕作古賀 脩
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1971 年 42 巻 5 号 p. 237-249

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抄録

雌鶏の結紮卵管内に精子を2日間滞在させたのちの受精能力の観測,卵殼腺部-腟移行部(以下腟移行部)の役割の追求,および組織培養法を用いることにより,卵管各部位における精子の受精能力保持ならびに受精卵の胚の早期死亡原因に関して研究を行なった.
その結果,精子の受精能力保持については,腟移行部およびろ斗部が他の部位に比較してもっともすぐれていることが証明された.卵白分泌部に精液を注入すると,雌鶏は長期間受精卵を産出するが,注精後第1週の卵における胚の早期死亡率は高くなることが観測された.しかし,精管の後部から無菌的に採取した精液を卵白分泌部内に注入した場合,受精率は前者とほとんど同じ値を示したが,胚の早期死亡率はかなり低下することが認められた.産卵鶏の腟移行部を切除し,回復後腟部注精を行なったところ,受精率はほぼ正常に近い値を示したが,胚の早期死亡率については受精卵の産出期間を通じて非常に高い値が観測された.したがって,卵白分泌部注精により胚の死亡率が高くなる原因の一つは,注精時細菌の混入によるものと考えられる.一方,腟部注精の場合,腟移行部はこのような細菌等が卵管上部に上昇することを阻止する役割を果しているものと推定された.
以上は生体内における観察であるが,精子を含むろ斗部組織の一部を体外に摘出し,組織培養法を用いて血漿培地に移植すると,その培地は固形状および液状のいずれの場合も,組織内の精子は41°Cの高温下ですくなくとも2日間はかなり活発な運動性を保持しうることが明らかとなった.

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