抄録
サイレージ調製における,詰込み時の蛋白質添加および埋蔵初期の空気導入という処理が,埋蔵過程における蛋白質の分解に及ぼす影響を調べるために,イタリアンライグラスおよびオーチャードグラスを材料として,6回にわたる実験室規模のサイレージ調製実験を行なった.すなわち,(A) 細切材料をできるだけ密に誌込む対照区,(B) 詰込みに際してグルテンを2%添加する区,(C) 対照区の半量の草を詰込み,当初4日間にわたって空気を導入する区,の3区を設け,埋蔵過程における蛋白態窒素(PN)と揮発性塩基態窒素(VBN)の変化を調べ,次の結果を得た.
1. 対照区においては,初期(詰込み後4-7日まで)に急速にPNが減少し,その後の変化は僅かであった.VBNの生成は,きわめて少ない場合と,詰込み後14-21日あるいは21-70日の間に顕著に増大する場合とがあった.
2. グルテン添加区においては,添加したグルテンを含めて初期に著しい蛋白分解が行なわれたが,詰込み後7日以降においてもひきつづきかなりのPNの減少があり,70日後のPNの量の対照区との差は小さくなった.VBNの生成は,対照区で顕著な場合は添加区も同様であったが,一方,対照区では少なく添加区で顕著な場合もあった.
3. 空気導入区では,PNの減少が他の2区よりも著しく緩慢で,かつ,最終的にもPNの量が比較的多く,好気的条件による蛋白分解の阻害が考えられた.しかし,VBNの生成は,例外なく顕著であった.
4. 以上の結果と有機酸組成とから,サイレージの品質低下は蛋白質の第1段階の分解には直接関係せず,第2段階のVBNの生成に対応するものと考えられる.