1972 年 43 巻 8 号 p. 446-456
リジン含量の異なる飼料(0.76%,0.91%および1.06%)をそれぞれ給与したひなに14C-アミノ酸混合物を注射して,体内アミノ酸の動きを追跡し,既に報告したリジン含量とエネルギー蓄積率および蛋白質蓄積率との関係を,体内各部成分への14C-アミノ酸の取り込みから検討するべく実験を行ない次の結果を得た.
1. リジンが著しく欠乏した飼料を給与したひなの呼気二酸化炭素への14Cの移行は,リジンがわずかに欠乏,または要求量を満している場合に比し明らかに高い値を示した.
2. リジンが著しく欠乏の場合にはひなの屠体,胸筋の蛋白質合成速度は,リジンが要求量を満たしている場合に比して低下の傾向が認められたが,肝臓では逆に蛋白質合成速度が上昇している傾向が認められた.
3. リジンがわずかに欠乏の場合には,鶏体脂肪への14Cの取り込みが促進され,他の両区に比し,体内アミノ酸からの脂肪合成が明らかに大きいことが認められた.
以上のことより,本実験によって前々報14)に報告した飼料中のリジン含量の増加に伴いひなのエネルギー蓄積率および窒素蓄積率が増加する関係をほぼ裏付けるとができたものと考えられる.