日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
各種熟成チーズの抗原性
高橋 富士雄
著者情報
ジャーナル フリー

1973 年 44 巻 5 号 p. 241-247

詳細
抄録

本実験では,各種市販熟成チーズの抗原性を,たん白質の分解状態とあわせて比較検討した.その結果は次のごとく要約される.1) Gouda, Edam, EmmenthalおよびGruyereチーズの熟成率(水溶性窒素/全窒素×100)がCamembert, St. Paulin およびBlueチーズのそれらにくらべ著しく低いことを認めた.一方,カゼイン抗原性が供試チーズのすべてに認められ,さらにそれらチーズの中においては,Gouda, Edam, EmmenthalおよびCamembertチーズの抗原活性がGruyere, St. PaulinおよびBlueチーズの活性に比べ比較的高いことを認めた.これらの事実より,熟成チーズの抗原活性の違いの要因として,その熟成に関与する微生物のたん白分解度が重要であると考えられる.2) 供試チーズのポリアクリルアミドゲル電気泳動により,それぞれのチーズに特徴的なカゼイン成分の分解像が観察された.さらに抗原活性の比較的高いGouda, Edam, EmmenthalおよびCamembertチーズの各泳動帯は比較的鮮明であるが,抗原活性の低いGruyere, St. PaulinおよびBlueチーズの各泳動帯は拡散し,輪隔が不鮮明である.3) Sephadex(G-100)ゲルろ過により,Blueチーズは2画分に,その他のチーズは3画分にそれぞれ分割された.これらの画分の中で,高分子量画分のみならず,熟成中にチーズたん白質の分解により生成されたと考えられる画分にも比較的高い抗原活性が認められた.

著者関連情報
© 社団法人日本畜産学会
次の記事
feedback
Top