日本畜産学会報
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血液型による家畜の親子鑑別の解決率に影響する要因について
大石 孝雄阿部 恒夫
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1975 年 46 巻 1 号 p. 1-5

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抄録

血液型による家畜の親子鑑別の解決率に影響する要因として,特に種々の親子鑑別事例と対立遺伝子の頻度,さらに用いる血液型遺伝子座数をとり上げて,それらが父権否定の確率に与える影響の理論的な検討を行い,次のような結果を得た.1) 相互優性の関係にある1対の遺伝子を有する遺伝子座では,いずれの親子鑑別事例においても,その遺伝子頻度が0.5の時に最大の父権否定の確率が得られ,優劣関係の遺伝子座では優性遺伝子の頻度が0.2の近辺でもっとも高い確率の値を示した.また,後者において優性遺伝子の頻度が0.7以上ではその遺伝子座による父権否定の確率は非常に低かった.2) 相互優性の遺伝子座においては,遺伝子頻度にかかわりなく父権否定の確率の高い親子鑑別事例の順序は,高いものから順に同腹子の父親判定,両親判定,一般的な父親判定,母を調べない父親判定,関連する父が3頭の父親判定であった.また優劣関係の遺伝子座において後者の2つの事例は特に父権否定の確率の値が低く,母を調べない父親判定の事例では確率の値はゼロであった.しかし,この優劣関係の遺伝子座で父親の遺伝子型が推定されている場合は,確率の値がかなり上昇した.3) 関連する父親の数が増加した場合,父権否定の確率は指数関数的に低下した.4) 用いる血液型遺伝子座数が増加すると,それらを組み合わせた時,父権否定の確率は指数関数的に上昇することがわかった.

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