日本畜産学会報
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代用乳中の脂肪含量が血漿中の脂質および肝臓中の脂質に及ぼす影響
田辺 忍亀岡 暄一
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1975 年 46 巻 12 号 p. 684-692

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抄録

代用乳中の脂肪含量が子山羊の発育,血漿中の脂質および肝臓中の脂質に及ぼす影響を検討するため,日本在来種子山羊9頭を用い試験を行なった.試験飼料としては脂肪源として無塩バター,炭水化物源として乳糖,蛋白質源としてカゼインを用い,脂肪含量の異なる三種の飼料(バターの配合割合:低脂肪区3%,中脂肪区22%,高脂肪区38%)を8日令より4週間にわたり各々3頭の子山羊に給与し,試験2,3,4週目に血液のサンプルを採取した.その結果,試験開始後2週間の高脂肪区における増体量は,低脂肪区または中脂肪区より有意に少なかったが,その後の2週間の増体量は各区間に有意差はなかった.このように高脂肪区の子山羊は試験開始後2週間までは高脂肪食に対し十分適応できなかったものと推察される.血漿中の中性脂肪含量は試験2週目では脂肪区は他区より著るしく高い値を示したが,3週目では各区間に有意差は認められなくなった.一方,4週目では低脂肪区は他区より有意に高い値を示した.血漿中の全コレステロールおよびリン脂質含量は試験全期とも脂肪含量の高い飼料を給与した区ほど高い値を示した.脂肪含量の高い飼料を給与した区ほど肝臓の全脂質含量は高い値を示したが,グリコーゲン含量は逆に低い傾向を示した.高脂肪区においては肝臓の中性脂肪およびリン脂質含量が低脂肪区より有意に高まったが,肝臓の全コレステロールおよび遊離脂肪酸含量は各区間に差はなかった.本試験ではエネルギーおよび蛋白質の摂取量が各区とも等しかったが,高脂肪区ではエネルギーを脂質として肝臓に貯蔵する傾向が見られるのに対し,低脂肪区(高炭水化物区)ではエネルギーをグリコーゲンとして貯蔵する傾向が見られた.

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