日本畜産学会報
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貧毛目(Otigotrich)の反すう胃内原虫中のステロール
日野 常男亀高 正夫
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1975 年 46 巻 12 号 p. 693-705

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抄録

貧毛目の反すう胃内原虫の生育がステロール類により促進されることの理由を説明するための第一段階として,摂取されたステロールが虫体内でどのような形で利用されるかを明らかにすることを目的として,貧毛目原虫中のステロイドを分析した.原虫の主要ステロイドとして(a)24-ethyl-5α-cholestan-3β-ol,(b)24-methyl-5α-cholestan-3β-ol及び(c)5α-cholestan-3β-olが同定され,また少量ながら上記スタノールの5β-異性体及びその他の未同定ステロール類が存在することが示された.(a)及び(b)は飼料中のステロールの水素添加により生成されたものと推測されたが,(c)の成因は明らかでない.
原虫中の総ステロール含量は乾物当り0.6~0.9%,総脂質当り6~7%であり,ステロールの組成は(a) 60~66%,(b) 13~15%,(c) 11~17%及びその他7~9%であった.ステロイド無添加の精製飼料を給与したヤギから採取した原虫では(c)の割合が著しく高かつた.ステロイドを全く含まない培地で短期間培養した原虫でも(c)の割合が顕著に高く,またその絶対量も増加したが,乾物当りの総ステロール含量は減少した.これらの結果から,(c) が原虫により合成されるか,又は他のステロールから誘導される可能性が考えられる.しかし,総ステロール含量が減少したことは,たとえ(c)が原虫により合成されるとしても,細胞の増殖速度に比べてその合成速度が極めて遅いことを示すと考えられ,このことから,原虫は膜成分としてのステロールを外因性のもので補充しているという可能性が推察される.

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