日本畜産学会報
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サイレージから分離した酵母の各種培地における増殖とサイレージの好気的変敗との関係
大山 嘉信原 慎一郎
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1975 年 46 巻 12 号 p. 713-721

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抄録

サイロ開封後のサイレージの好気的変敗の機序を解明する目的で,開封後1週間断熱容器内に好気的条件で放置したサイレージから約100株の酵母を分離し,これから10株(Candida, HansenulaおよびPichiaに属する)を選んで,各種培地における増殖を調べた.各種のサイレージの水抽出液に酵母を培養した結果,開封後変敗しやすいサイレージの抽出液にはすべての酵母が増殖したが,好気的条件において変敗しなかった低品質のサイレージの抽出液には,若干の酵母が増殖しないことが認められた.各種栄養源を添加した低品質ザイレージの抽出液,各種有機酸を添加した高品質サイレージの抽出液,およびサイレージに認められる有機酸(乳酸,酢酸,プロピオン酸,酪酸)を炭素源とした合成培地を用いた酵母の培養実験の結果,低品質サイレージの抽出液に酵母が増殖しない理由は,栄養素の欠乏によるものではなく,酪酸あるいはプロピオン酸の阻害作用によるものであると認められた.酵母の増殖阻害作用は,等モル濃度では酪酸の方がプロピオン酸よりも強く,かつpHが低い場合に阻害効果が大きくなることが認められた.サイレージ(乾物含量28.0%, pH 4.02)1kgあたり80ミリモルのプロピオン酸あるいは酪酸を添加して,断熱容器に詰めて好気的条件に放置した結果,無添加区に比して温度上昇を遅延させ変敗を遅らせる効果が明らかに認められ,その効果は酪酸の方がプロピオン酸より顕著であった.

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